08
「ファイも、なんだかんだいってエイルのこと気にかかってるんじゃない?」
ファイはその言葉には、何も反応を示さなかった。
けれども確かに最近は、エイルのことが気がかりなのも嘘ではなかった。好きだといわれたときから、どこかじんわりと何かが広がるような感覚があるのはファイも自覚している。でもそれがなんなのかまでは、ファイにはわからなかった
▲▽
「おいてめぇ、何勝手に荒らしてんだ!!」
まったく物騒な世の中だ。得体の知れないやつに枕を投げつけてこちらに注意を向ける。やつはこちらに気がつくと、猛スピードで俺を追いかけてきた
実はつい先ほど、学校内に何かが進入した
それは魔物で、いままで夜見てきたほかのどれよりも大きく、グロテスクな魔物だ。おまけに校内を荒らすものだから先輩やら先生方が動き出したのだが、なんとあいつは、そんじゃそこらの物理攻撃がきかないらしい
何かで倒さなければいけないのだがそんな方法も思いつかず、学校は荒れるばかりでどうしようもなかった。だから俺が囮役をかってでたのだ。注意をひけば知能の低いあいつはこちらに向かってくるし、そのまま俺は外へと飛び出す
もちろん外にだって魔物はいる。どこからか猫の威嚇するような声が聞こえたが、それも無視した
「こっちだ!!化け物!!」
「グォオオオ!」
変な鳴き声をあげながらスピードをあげる魔物。それに瞬時にやばいとは思ったが、このまま逃げ続けるしかなかった。助けを呼んだところで犠牲者が出るかもしれないのだ。そんなこと出来ない
走って走って学校からなるべく離れていれば、とうに奴との距離は縮まっていたのか武器が振り下ろされた
「がッ、ぁ」
咄嗟に立ち止まるが、背中が熱い。なるべく傷を意識しないようにしてみても、痛みはどんどん強くなって、暗くてもわかるほど血溜まりが出来はじめていた。それでも俺は動いた。魔物は追ってくる
「(どうせこうなってしまったら・・・・・!!)」
あいつも道連れにしてやる!!
空に落ちるギリギリ一歩手前で止まり、やつが俺に近づいたその瞬間を狙って魔物に突っ込んだ。そのまま締め付けるように魔物に腕をまわし、そのまま一緒に空へダイブする。きっとファイとかリンクがいたら状況は違ったのだろうけれど、生憎と今は二人とも色んな場所を走り回っている頃だろうから、それは望めないことだった
それに、
もう俺は上には上がれない
「あっはははは!!ざまぁみろ!!お前は飛べねぇからな!このまま地面と一緒に潰れて骨になって粉々になってラブラブしてろバーカッ!!」
精一杯叫んだら、頭がぐらぐらして気持ち悪くなった。意識がどんどん遠退いていくのがよくわかる。まさかこんなにリアルに意識が落ちる瞬間を体験できるなんて、きっと今までもこれからも思いもしなかっただろう
「っちくしょう、」
背中が痛い。熱い。血が空を舞う
最後にファイの顔を一目でもいいから、見たかったと呟いた
羽ばたく音が空気を震わせたのにも、気づかずに
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