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 #三分をまだ三分というのはおかしい。



着々とお客さんの数が少なくなっていく中、死んだような目をしてレジに立ちすくむ。最後と思われるお客さんが私のレジに来たのを見計らって、向かい側のレジにいる女の子が自動ドアのスイッチをオフにしに行った。


「いやぁすみませんね!こんな時間に」

「ギリギリでしたね〜」

「は?ギリギリではないでしょ?まだ三分もあるじゃないですか」

「(・・・・はぁ?)そうっすねー」


三分をまだ三分というのはおかしい。3分なんで短いもんだし、こちとらお前らみたいな閉店間際にくる客でイライラしてんだよ。なんだよまだ3分って!てめぇがモタモタしてるとそれを見かねてほかのお客さんもその3分以内に自動ドアとか関係なしに入ってくるんだよ!!店奥のほうの手動のドアの鍵閉め損ねてたら入って!来るの!!正面自動ドアなんて何それ?状態なんだよ!

大体自動ドアが自分で開かなくても、レジが機能してるってわかった途端気が強ぇババァどもは自力でこじ開けてきやがるし!いい加減にしろよ本当もぉぉおおお!

とは思うが、顔には出さない。声にも出さない。「ありがとうございました〜」といつもより高い声で言い終わり、そそくさとレジ閉めの作業に移り始める。


「あ、私買い物あるんだった。コナギちゃん、そっちしめていいから、私のレジのほうで私の打ってくれない?」

「いいっすよ!」


嫌ではないので軽く返事をしてから、手元に視線を向けた。そういえばわたしも頼まれているものがあった気がする。野菜をいくつかと、お供え物のリンゴと・・・・・あとなんだっけ?忘れたけど、ジュースを買っていいというお許しが出ていたのはしっかり覚えていたので、ふらふらと歩き出した。

なんだか意識がふわふわする。

風邪でもひきはじめたのかなぁと思いながら、買い物も仕事も終わらせてタイムカードを押した。そして店内から外へ出ると、なんと、どしゃぶり。


「うげぇぇ」

「傘持ってきた?大丈夫?」

「あぁはい。家まで近いんで、傘なくても大丈夫ですよ」

「そう?にしてもこんなに降ってたかなぁ・・・・・さっきひどくなり始めたのかもね。雨女だし」

「誰が」

「私が」

「うげぇぇ」

「何よ〜。まぁ、早く帰って早くお風呂に入ったほうがいいよ。風邪ひくからね!」

「そうします・・・・」


正直前もろくに見えないくらいの土砂降りに、気は滅入るばかりで屋根の下から出ようとも思えない。だいたい、最低でも歩いて20分はかかるのだ、私の家は。それを重たい買い物袋を持ったまま走るだなんて無理。絶対無理!

ほとんど上り坂なのにさ!

顔を顰めたまま、一体どれくらいの間そうしていただろうか。さすがに帰らなければ親が心配するだろうと考え、一歩踏み出した。

やはり目で見てわかるほど雨はひどく、すぐに全身が水浸しになって服が重く感じ始める。やだなぁ。そう呟くも、ここまで濡れてしまえば走る気すらも起きないというもの。なんだかだんだんどうでもよくなってきて、指先から冷えていくのを感じた。

視界は相変わらず悪い。

なんだかしばらく歩いていたら、もやもやした白い、霧?のようなものが見え始めた。雨が降ってる中で、霧?

おかしい、と直感的に感じて足を速めるものの、しばらくすると雨はやんでいた。ふと辺りを見渡せば、そこかしこに木々があって、もやもやしたものも徐々に消えていく。ずっと適当に動いていたからか、今自分がどこにいるのかもよくわかってはいなかった。が、なぜか変なところにいるのはわかる。

なんだここ。こんな場所なかったはずなんだけど・・・・

買い物袋を一旦地面におろして、携帯を取り出す。最近買ったばかりのスマホは起動こそするものの、圏外ばかりをうつしてろくに誰かと連絡をとることもできない。これは困ったと思ったけれども、とにかくここに居てもしょうがないからとまた歩き始めた。

この木々を抜ければどこかには着くだろう。大丈夫だ、この町は生まれたときからいる場所だし、小さいころには町中を走り回って遊んでいた。開けた場所にさえ出れば、


「誰だ?」

「ひぃっ!?」


張り切っていた私の気持ちをへし折るかのように低い声がして、展開は悪い方へと進み始めたのだが、このとき私はまだここが自分の町だと信じていたので、赤い髪の男の人がなんで私を警戒しているのかまったくわかっていなかった。



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