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チビ達だってやっぱり辛いのだし、イリアがどうのこうの考えるのはよした方がいいのかもしれない。俺が元の世界へ帰ることが出来ないように、こいつらだって普段はアホみたいに遊びまわっていたとしても、夜になれば不安で泣いているのだ。村に帰りたいその気持ちもわかるし、親に会いたいのもわかる。

わかってやれるからこそ、俺までふにゃふにゃしていてはダメなのだ。

だから強くなろうと思って、木刀も作った。夜は見張りをした。昼間は魔物の活動がそんなに活発ではないため、安心して眠れる。所謂昼夜逆転というものになってしまっていた。

だから、リンクが度々顔を見せても話すことはなかった。けれども今日は満月で割と明るい夜に、教会へと来たようだ。俺はすぐさま気づいて挨拶をする。


「順調?」

「まあ・・・・・ちょっと、怪我したけど」

「赤いクスリ飲んどけよ治んだろ」

「そこは普通手当を申し出るところだろ!」


拗ねたようにしてドカリと椅子に座ったリンク。そして何故か一心に俺を見つめてくるので、なんだよ何かついてんの?と聞いたら顔のパーツぐらいしかついてないんだと。それ以外のものがついていたら逆に驚きなんだが。さっき顔洗ったし。

しかし話が終わっても俺を目で追うものだから、しょうがなくやつの隣に腰かけた。


「話があるなら言ってくれ。どうせ暇だし」

「言ってもいいのか?」

「逆に言っちゃいけないようなことなのか?リンクが今から言おうとしていることは」

「・・・・・・・人による」

「偏見は割とないほうだ。ゲイだろうが幼女趣味だろうが言ってしまったほうが楽だよ」

「そこらへんは普通だ!」

「なんだ、面白くない」

「・・・・・・・・・はぁ」


片手で顔を覆い、重たい溜息をつくリンク。・・・・・・珍しい。いつも元気だし悩むようなこともあまりないんだと思っていたのだが、本当にどうしたのだろうか?ダンジョンで詰んだ?残念だが俺時オカしかやったことないんだわ、すまんな。アドバイスできそうにないわ。

ポンポンと背中を軽く叩いてやると、リンクはまるで言葉を選ぶかのようにして喋りはじめる。俺はそれに耳を傾けた。


「あのさ、もう、戻らないんじゃないかって思い始めた」

「・・・・・・・・・?」

「まるで別人みたいに変わったのは確かなんだよ。俺の知ってるイリアとはかけ離れてるから、それは当たり前にわかるんだ。・・・・・・記憶のないイリアに話をしたところでなんだけど、」


悲しそうに目を伏せたリンクは、諦めているのだろうか?

泣きそうになっているのはわかっていたから、どうしたもんかと思っていたのだけれども、ふとリンクが俺を抱きしめたので考え込むことは出来なかった。


「・・・・・・ちょっと疲れたのかも」

「なら休まないとな」

「イリアは昼寝てるのか?」

「見張らないと危ないだろ。チビ達と一緒に、旅が終わればリンクも村に戻るんだ。もちろん、イリアも!」


女体だからしっかりしはじめているのかもしれないし、よくわからないのだが、やはり弱っている人間を見ると放ってはおけない。むしろシャキッとしなければ!とも思う。これが母性なのかなんなのかよくわからんが、間違いなく言えるのは、ゲームばかりしていた俺はここまでしっかりしていなかったはずだ。

イリアの体に入り込んだ影響だろうか。

知らず知らずのうちに口は勝手にものを語る。


「諦める必要はない!俺がちゃんと記憶を戻してみせる。リンクが大切に想っていた子なんだろ、どうにかしてやるさ!イリアだってきっとお前に会いたがってるはずだからな」


だから弱音を吐いたとしても、本当に諦めたりなんかしないでくれ。

そう思えるのはやはり俺がイリアにはなりきっていないからだろうし、二人の関係を第三者の視点で見ているからこそどうにかしようと考えられるのだろう。イリアであってイリアではないのだ、俺は。

けれどもイリアを自由に動かせるのは俺だから、なんとかしないといけないのは俺だ。