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今更になって事の重大さに気が付いた。馬鹿だな俺!

だってこのままだったら俺、こんな訳のわからない魔物とかはびこってる世界で生きていかなきゃいけないんだろ?しかもあれだよこれ、リンクとかゾーラ族とかめっちゃ聞いたことあるなって思ってたらゼル伝じゃねーか!

時オカじゃないの!?時オカだったら俺ちょっとしたことあるからわかるのによぉ!

一人心の中で嘆くも、体はもとに戻らないし一夜明けたところでちっとも帰れそうな気配はない。ゾーラ族の子供はベッドで寝たっきりまだ起きないようであるし、なんか同じ村に住んでるらしいガキはうるせぇし・・・・・ちょっと今考え込んでんの!お兄さん忙しいんだよ、あっち行って遊んでろ!

都合のいいことにイリアさんは記憶喪失ということになっているらしいので、俺がどんな態度を取ろうとも「まるで別人だ・・・・」程度で済むのだ。記憶が戻ったら、いつかの天真爛漫な女子に戻るだろうと。周りの人間はそう思っているのだ。

だが残念だったな。中身はしょーもない男な上に記憶が戻ることはまずない。イリアの記憶を引き継ぐことなどありえないだろうし、俺の過去は村で暮らしていた女の子のものではなくて、だらだらと年中ゲームばっかしてた男子のものだ。夢を見てるとこ悪いがイリアさんはもう戻って来ないよ!俺がこの体から出ていければいいんだろうけど!!

まあそんなこと出来るのか今のところはわからない。でも切実に言うなら出来てほしいし、早く帰りたい。これほど親が恋しくなろうとは思わなんだ。


「何か思い出せること、あったか?」

「ないな」

「エポナ見て何か感じたりとか」

「可愛いなこいつって思ったくらい」


そういえば男の口調そのままで喋ってもリンクだけはさして気にしていないようだったな。

やつにとってイリアの口調がどうであれ関係ないのかもしれない。さしたる問題ではないと考えているのかもしれないし、やっぱりいずれは戻ると信じているのかもしれない。記憶喪失ということでリンクのことを覚えていないことになっているし、まだ一日しか共に過ごしたことはないが、結構こいつ優しい。

いや、まじで優しい。イリアのこと好きだったんだなって感じて、そこで初めてちゃんとした罪悪感がチクリと胸を刺した気がした。

思えばイリアの場所を俺がとってしまっているのだから、俺のせいではないとはいえ酷いことをしてしまっていると思う。まあイリアだったやつがどうなったのかまでは分からないので、なんとも言えないのだが。

端正な顔立ちをしたリンクは少し頬を緩めると、つとめて優しい声で俺に言い聞かせる。


「急がなくてもいいからな。気になったこととかあったら、今度また会ったときに話してくれ」

「オッケー」


絶対こんな子じゃなかったな、とは思うのだが、リンクはやっぱり気にしていないようだった。本当に問題だととらえていないのか・・・・・?


「たまにここに来るから」


そう言い残してやつは教会から出て行った。

そこでふと、彼は同じくらいの歳にも関わらず魔物と戦い、いずれはガノンドロフを倒すのだろうことを思い出して、割といい子である(はずの)俺は考える。

体は女とはいえ元は男であるし、やっぱりめそめそしているだけではどうにも落ち着かない。自分から面倒なことをする性分ではなくとも、申し訳なさとか色々あるし、せめてこの村だけでも守れないもんかなあとしみじみ。

村とは言わずとも、ガキやこの唇お化けのおっさんも。魔物と戦えるようになったら少しは安心できるのでは?

正直魔物怖いしアレだけどまあ慣れだよな!とりあえず慣れることから始めよう。