見返り | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
俺はどうやら性転換に成功したらしい。


「ゾーラ族を診れる医者が、カカリコ村にいるのは知っているがねぇ」

「じゃあそこまで行けばいいじゃん」


なんの状況かもわかっていない俺がうかつにやってしまった発言により、どうやらカカリコ村というところに馬車で行くらしい。え、ちょっと待って?突然すぎて俺ついていけない!


▲▽


おっす俺イリア。本名はどうしてか忘れてしまったが、イリアとかいう女になる前までは男子高校生をしていた人間だ。帰宅部とか何それおいしいの?な高校であったがために、文武両道とは言わずとも何かしらの部活に入部しなければいけなかった。ので、テニス部に入ってた。ついでに言うと主にしてたのは球拾い。まあそんなもんだよな。

勉強は嫌いで、必要最低限しかしていなかったからいつも赤点ギリギリで成績を残していた。そんな凡人もいいところの俺がどうしてこんな目にあっているのかというと、正直俺にもわからない。わかっていたらとっくの前に解決しているというものだ。


外をチラッと覗く。なんか意味のわからん化け物が何匹も空を飛んでいて、思わず空笑いした。本当に何が起こってるのか理解デキナイ


というかそもそも今になって考えてみれば、カカリコ村へ行くのは道中危険だとかなんとかおばさんが言ってたな。テルマさんだっけ?それで俺が「行けばいいじゃん」発言をしたことによりテルマさんが決意し、丁度近くにいた兵士(初めてみた)みたいな人達も護衛を頼んだら最初は喜んで受けてくれた。

だがテルマさんが魔物がたくさんいて危ないだのなんだのあまりにもいうものだから、兵士の人達は真っ先に我先にと護衛役から逃げ出して、酒場に残ったのは俺と、テルマさんと、なんか気持ち悪いゾーラ族とかいう生き物と、緑の服を着た男だった。

で、結果的に歳はそう変わらないであろう少年が護衛をすることになったのだ。相手はやけに俺の顔を見てきたが、知り合いだろうか?すまんが俺はイリアであってイリアではないのでこれっぽっちもお前のことなんて知らない。断言できるわ。

うーん・・・・でもなんか、ゾーラ族とかリンクとか、聞いたことがあるんだよなぁ・・・・


「もうすぐ着くからね!安心しな!!」


テルマさんが声をかけてくれたので、それに返事をしてからまたもや外を覗く。魔物と呼ばれる化け物たちの姿は見当たらない。それもこれもすべて、周辺にいる魔物をこのリンクとやらが片づけてくれたからだろう。

なんだかわからんがこいつ、強いんだな!

そんな認識である。

話の流れ的に俺が(正しくはイリアが)ゾーラ族を助けたいと駄々こねてこうなったらしいので、後でお礼を言っておかなければ。正直俺には微塵もこのゾーラ族を助けたいだなんて気持ちは存在していないのだが・・・・なんか見たことのない生き物だし・・・・

このイリアという体の持ち主がそうやって我儘を言ったのだから、その体に入り込んでしまった俺が対処するのは当たり前である。


「さあ、着いたよ!」


テルマさんの声に「長かったな・・・・」と呟きながらゾーラ族を抱きかかえる。肌がひんやりしていてちょっと気持ち悪い。・・・・ぬめりがないだけマシだと思うべきか?

馬車から降りればリンクがこちらに両手を突き出したので、遠慮なくゾーラ族をリンクに預けてその背中を追った。