知ってるよ

「あれ?どこいったんだろ」
 机の中に入れて置いた読みかけの本が消えている。まだ半分しか読んでなかったのに!
「おい浩人。置きっぱなしにしてあったぞ」
「あ、さんきゅ」
 と、思ったらすぐに見つかった。
 持つべきものは友達だなぁ…
 最近、よく物を置き忘れたり落としたりする。普段から物忘れなんかは激しかったけど、ここ最近の状態はよろしくない。
「お前ってほんと手がかかるよな…ヤバい、心配。超心配。放っておいたら死ぬんじゃね?」
「何だとぉ…?」
「いやいや、ほんとじゃん」
「くっそ、笑うな慶一!」
 この野郎。友達だからって言っていいことと悪いことがあるんだぞ。
 確かに慶一は何でもそつなくこなすし、勉強できるし、気配りはできるし、料理も上手いし、女子にもモテるし…完璧な奴かもしれないが…あれっ、目から水が流れてきた。
「どうせ俺はボケボケだっての…」
「まぁ、そう卑屈になるなよ。万が一のときは俺が支えてやるからさ?」
 こらえきれないというように、クックと慶一が笑う。失礼な奴だ。
「大丈夫ですー。お前の世話にはなんねぇよーだ!」
「はは、そうかよ。あ、そうだ。これも渡しとく」
「?」
「浩人が読みたがってた本。俺はもう読み終わったから貸すよ」
「え?あ、おお!いいのか?図書館のやつ貸出中でさぁ」
「たまたま家にあったから」
 こういうところが女子にモテるんだろうなぁ…。しかし慶一がライトノベルも読むなんて、少し意外だ。
「他にもまた貸すよ」
「おう、ありがとな。それじゃあもう帰るな。じゃあなー」
「ああ。また腹出して寝るんじゃないぞ?」
「うっせ」
 そういえば昨日は腹出して寝てたからか風邪気味なんだよな。気をつけよ。
 慶一は「ああ、それから」と言って、にっこりと微笑んだ。
「お気に入りのシャツの裾、ちゃんとほつれたところ縫っとかないとダメだぞ?なんなら縫ってやろうか」
「おかんか!」
「ははは」
「母さんに頼んどくよー」
 慶一と別れてから、ふと思ったんだけど、
 



 昨日の夜あの服の裾を引っ掛けたのを、どうして知っていたんだろう。






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