「この窓の向こうに、あなたは何を見ているの?」
 1度言われた事がある。
 誰にかは忘れてしまった。
 なにを言ってんだ、そう思った。
 窓の外は雲ひとつ無い空と同じ色の海。手前に道路や住宅があるが、この風景を表す言葉としては省略して構わないだろう。
 見えるままを伝えると、そう、と誰かが言う。
 「じゃああなたはいつも、誰と問答しているの?」
 誰かが続けて、俺は叫んだ。
 誰って、決まってるだろ。俺の友達だよ。お前こそ、お前らこそ誰なんだよ。勝手に人の家に、そうだ、人の家に上がりこんで。お前らは、誰なんだよ。
お前らは、

 「おいってば!」
 体を揺さぶる衝撃と声に目をさます。目の前には彼の顔があった。
 端から見ると不機嫌そうな顔をしているが、心配してくれているんだろうな、と俺は思った。
 「魘されてたぞ。変な夢でも見たかよ」
 寝起きでぼーっとするあたまを軽く振って覚醒させる。
 窓の外に目をやると、眩しいくらいの青色だった。
 澄んだ空気を吸い込んで、鼓動を落ち着かせて彼の方に微笑む。
 「さて、なんだったかな。どんな夢だと思う?」
 またいつもの流れに持ち込もうとしている俺に、知らねーよ、と笑いかけてくれた彼はどこまでも優しいと思った。

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