「エネルギーが必要です」
 そう言って布団から出ようとしない彼女をどうやって引っ張り出そうか。まるっと全身に毛布を被っているから触れることができない。
 普段のハキハキとした喋りとは真逆ののったりとしたセリフだったので、早くしないとまた眠りこけてしまうだろう。
 全く、本当に休日の彼女はだらしがない。会社での反動がきているのだろうか。
 「朝ごはん出来てるよ、トーストとスクランブルエッグ」
 「持ってきて食べさせてよ」
 朝も昼よりの朝けど、と心中付け足すと予想外の言葉が返ってくる。
 万が一ここに持ってきて食べさせようとしたところでパン屑とかで布団が汚れてしまうと思うのだが。
 汚れちゃうよ、と言ったら、いいもん、なんて。
 なんだか可愛らしいことを口にしたので、ああそうか、と納得した。
 その心情のまま彼女の隣に横たわる。片腕を体を抱くように乗せると彼女が
息を飲んだのが微かにわかった。
 「じゃあ寝てようか。一緒に」
 「……」
 朝食が昼食になってもまた温めればいいし、これで正解なら軽い事だ。
 自分も毛布の中に入れて欲しいと伝えようとしたところで彼女ががばっと起き上がった。
 見慣れた不機嫌に見える顔はほんのりと赤く染まっている。
 そして先ほどまでののそのそした喋りとは打って変わり、いつもの調子で言い放った。
 「食べるわよ。……一緒に」
 嬉しい言葉に思い切り伸びをして体を起こす。
 既に寝室から出ようとしてる彼女に続きつつ、エネルギー補給できたの?、なんて訊いたら渾身の力で殴られてしまった。
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