優先されるべきもの | ナノ
「福島さん、映画のチケット貰ったんですけど、良かったら……一緒に行きませんか?あ、あの、別に無理にとか、そんなつもりは……ただ、一緒に行けたらいいなって…………」
「アンタって飾り気が無いっていうか、シンプルよねぇ。別に悪くないけど、たまにはアクセとかつけてみたら?お姉様が見立ててあげるわよ?」
「今日って空いてる?べ、別にデートとかそんなんじゃないんだけどね、あそこのカフェ、カップルで行くとドリンクの値段だけでおっきいパフェが食べれるって聞いたの。ほら、一応男と女だし?カップルに見えなくもないじゃない。不本意だけど。パフェのためよ」
「あ、センパイ。一緒に特訓しようっス」
「あ、あの……良かったら……その………………何でもないですっ!」
「あなた紫杏の誘いを断るなんていい度胸してるわね」
「あ、士郎のセンパイだ」
「福島、金貸してくれ!」
……今日は一体何なのだろうか。
上から順に、相原橙悟、草島桃介、綾小路碧、藤村太陽、浜谷紫杏、山口灰那、榊玄也、津田紅……。
とにかく、会う人間にやたら声をかけられる。というかやたら知り合いに出会う。会いたくないのに何故か。
それでどういうわけか何かに誘われるのだが、断る。それがすごく面倒臭い。
ちなみに紫杏の誘いは断っていない。彼女の方が(おそらく)誘うのをやめたからである。だから、灰那から睨まれたのはとんだとばっちりだ。
時計を見る。10時ちょうど。しまった、遅刻か。
仕方なく走る。
「悪い」
とっくに着いていたであろう人物に謝る。その人物は特に表情も変えずに「今来たところですから」と言った。
とはいえ相手が普段通りであれば少なくとも15分前には来ていたはずで。つまり15分待たせてしまったはず。
変わらない表情の中にほんの少しだけ、拗ねた要素を発見して、微笑む。
言い訳という行為は、普段ならしない。こちらに非があるという事実だけでいいから。何より面倒臭いから。
だが、これからその言い訳をしてみようと、蒼は思った。
色々な誘いを断って来たのだといったら、ヤツはどんな表情をするだろうか。誘われたということに嫉妬するだろうか。断って来たことに喜ぶだろうか。
そんなことを想像して口元が緩んでいるところを「何ニヤニヤしてるんですか」なんて言われた。まあ、事実か。
「……行こうか」「はい」
ああ嬉しそうだなとか。何か可愛いなとか。そんなことを思ったらまた口元が緩んだ。
優先されるべきもの
(恋人・金子士郎とのデートに他なりません)
‐END‐
遅くなりました!
青総攻め逆ハーで、白オチ、というリクエスト頂きました。
青白…逆に見えそうですが楽しく書かせていただきました。
逆ハーが逆ハーにならず……すみませんでした。
ではリクエストありがとうございました!
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