好きなら許されるなんて思わないけど | ナノ

「大事な人は?」と聞かれてまず思い浮かぶのは家族だ。それも、兄弟。ただ一人の自分の半身。
ちょっと馬鹿で、抜けているところもあるけれど、誰よりもカッコイイ兄のこと。



津田朱(つだ あかね)の家庭は少々変わっていた。家族構成は普通。自分と兄と両親。ただその兄は双子の片割れであるという点は変わっている方かもしれない。
自宅は「普通」とは掛け離れた、「豪邸」というやつ。
それもまあ、父親がちょっと大きな会社の社長をやっているからで。幼い頃はその手伝いをする母親が家を空けることも多く、寂しい思いをしたこともあった。

けれど朱には「半身」とも呼べる大事な兄がいた。

だから寂しかったけれど、寂しくなかった。



『あかね、おれがしゃちょうになったら、おまえはひしょだからな!』
『うん。ぼくがしゃちょうだったら、にいさんがひしょだよね』
『そーだ。そんで、たすけあいセイシンってやつでがんばるんだぞ!』
『うん!』



そうして笑った兄のことを思い出す。
兄は、いつだって楽しそうに笑う人だった。だから一緒にいて楽しかったし、その笑顔に安心した。何よりも兄と居るのが好きだった。

だから、








「ごめん、俺と別れてほしい」
「…………」


紅が、好きな人ができたと教えてくれたのは少し前だった。

その人にようやく告白して、OKを貰ったと聞いた時。この計画を実行することに決めた。

『紅』のフリをして彼女と別れる、という最低な計画を。



(だって、ずっと一緒だって言ったのに)
(だって、紅には俺がいればいいのに)
(――俺には紅がいればいいから)





「俺に、二度と話し掛けるな」




好きなら許されるなんて思わないけど
(この最低な行為の理由は愛なのだ)





紅が出てきてない…!
ごめんなさい、いつか必ずリベンジします。

朱紅は本当に甘甘なイメージです。だからこそ病み気味な朱くんを書いてみたかったわけですが。
朱紅スキーが増えますように!


リクエストありがとうございました。期待を華麗に裏切った感じです。申し訳ありません…!


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