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甲斐が嫉妬してくれた。
焔が星野光といるところを見て、嫉妬してくれたらしい。それが嬉しくて、甲斐が自分を避けるのも好きにさせていた。もちろん逃がすつもりなんてなかったけれど、少しだけなら好きにさせてやってもいいかと思えたから。
――でも、これはダメだ。
甲斐が、自分以外に笑いかける。
楽しそうに話す。
そんなこと、耐えられない。
最近俺には笑いかけてくれないのに。困った顔ばかりしてるのに。
そんなのズルいと思うだろ?
金曜日。甲斐は学校を休んだ。風邪だとか。電話で苦しそうな声だったからと心配した担任に、様子を見に行ってやって欲しいと頼まれた。頼まれなくても様子は見るつもりだったけど。
「正岡、黒川と仲直りした?」
お節介な鈴木が声をかけてくるので、そもそも喧嘩なんてしてないと答えた。
甲斐のことを気にかけている人間が他にいるというだけでもやもやしてくるが、何とか堪える。
大丈夫、甲斐は今は俺のことで頭が一杯だから。
授業は一日上の空で、こんなことなら自分も休むべきだったかもしれないと考える。でも、こうしないと甲斐のお仕置きにならないし。
「ただいま」
自宅に帰ると真っ直ぐ寝室に向かう。
室内は焔が出かけた時のまま。ベッドで毛布にくるまっている甲斐がこちらを睨んでいた。
「これ、外せよ」
甲斐の右足には枷がつけられていて、それがベッドに繋がれている。鎖はそれなりに長く、寝室の隣にあるトイレには入れるように考慮してつけたものだった。
「甲斐、抜いちゃったの?」
部屋の片隅に捨てられたアナルプラグを拾い上げると、甲斐の肩が震える。
「……抜くに決まってるだろ」
「せっかくこれも博士に作ってもらったのに」
足がベッドに繋がれている以外、甲斐は比較的自由だった。服は焔に奪われてしまっているが、毛布を巻き付けて裸を隠している。
せっかくだから甲斐が自分で抜くところも見たかったものだ。恐る恐る触れて、抜くだけなのに気持ちよくなって可愛い声をあげたのかもしれない。
「いいかげん、ここから出せ」
昨日の夜ここに連れてきてからずっとこれだ。甲斐は帰りたい帰りたいとうるさい。
焔だって別に甲斐を監禁したいわけじゃない。まあそれなりに監禁はしたいけど、甲斐のためを思って我慢してきた。
「甲斐はいつもやだやだ言うよね。俺には最近笑いかけてもくれない。なのに、星野には笑ってた」
ベッドに上がり、甲斐の腕を掴む。怯えて逃げようとする体を押さえ付ける。
「プラグが嫌なら俺のを入れるしかないね」
やだ、と、開きかけた口が閉じられる。甲斐のそこに触れると、閉ざされてはいたが、いくらか柔らかい。手のひらにぶちまけたローションを冷たいままそこに塗りつける。
冷たい、と文句を言う甲斐の口をキスで塞ぐ。
甲斐の唇はいつまでも触れていたいほど柔らかい。絡め取った舌が甘い。
「ん、ふぅ……」
キスの合間に漏れ聞こえる声が色っぽくてたまらない。
「甲斐、好き、甲斐……」
ほんの少しでもいいから、たとえば暗示にかかるように、甲斐が自分のことを好きになればいいのに。そう焔は思った。
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