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▽ Nまた、乱れた週末を過ごしてしまった※


 
 無機質な何かが体内に入り込むことに恐怖を感じる。

「や、こわい……」

 それをしている犯人に助けを求めるのもどうかと思うが、すがるものも他にない。
 怖くないよ、と頭を撫でられる。どこか安心してしまうが、油断できない。
 どこまでも奥に入り込みそうと思ったそれは途中で止まった。それでも甲斐にしてみたらだいぶ深く犯されていて、苦しかった。

 半分くらいは入ったらしく、尻から生えるように出ているそれを掴まれる。

 ――ブイイイイインッ

「あああああああっ」

 突然、体の中のものが激しく震え出した。抑えきれない声と共に射精したのがわかる。

「や、や、おねが……とめっ」

 焔に懇願するが止めてもらえない。それどころかスイッチを入れたままのソレで中をかき回される。
 動く度に内側の弱いところを抉るように刺激されて、イキそうになる。

「鶴見博士に開発してもらったんだけど、甲斐のここは美味しそうに飲み込んでるな」
「――ひいっ、や、やだぁ」
「止めてほしい?」
「とめ、て……」
「オモチャより俺の方がいいから?」

 必死に頷く。こんな風に激しく体の奥を暴かれるくらいなら、焔に貫かれる方がマシだと思えた。

「じゃあ今日はオモチャはここまでにしようか」
「――あんっ」

 一気に抜かれて甘い声が出る。シーツに濡れたソレが放り出されている。

「このオモチャは甲斐にプレゼントするから、寂しいときは使ってね。ちゃんと俺を思い出せるように赤い色で作ってもらったんだ」

「いらない……」

 乱れた息を整えようとするが、整う前に今度は焔のペニスに貫かれる。

「――ひぁあああっ」
「甲斐の中……ずっと我慢してた。本当はずっと入っていたい」

 言葉通り、焔はそのまま意識が飛ぶまで甲斐を犯し続けた。



  ※※※


 また、乱れた週末を過ごしてしまった。


 結局焔は土曜の夜に現れてから日曜の夜まで帰らなかった。学校があるからとなんとか追い返したが、すごく不満そうだったことを考えると、次は学校に必要なものを持ってやってくるかもしれない。
 最悪だったのは風呂場で焔の精液を掻き出された時だった。奥まで出してしまったから指で広げて見せてくれないと掻き出せないと言われたりだとか、掻き出しているだけなはずなのに弱いところを刺激されて気持ちよくなってしまって、気がついたら挿入されてまた中で出されて……

 正直、殺されるかと思った。

 日曜日の夕方近くなるとそういうことはしてこなくなり、急に甲斐の体を気遣い始めていた。もしかして平日は学校があるからそういうことはしないでいてくれるのか?
 だからといって週末に抱き殺されたくはない。
 追い返した後は後で、ベッドや風呂場だとか、至るところで焔に抱かれたことを思い出してしまい、恥ずかしくてたまらなかった。

 もうお婿に行けないかもしれない。わりと真面目に甲斐は思った。


「はー」

「黒川、ため息なんてどしたの?」

「ん。何でもない」


 隣の席の鈴木が心配してくるが、誤魔化す。
 今は昼休み。いつもなら焔と弁当を食べているところだが、今日は用事があるからと、チャイムと共に教室を出ていってしまった。
 その代わり、甲斐の前には、焔が作ってきてくれた弁当がある。

「黒川が弁当なんて珍しい。正岡がいないのはもっと珍しい」
「俺もそう思うよ」

 焔がいないのでなんとなく鈴木と弁当を食べている。
 普段は買い弁しかしないからなあ。家では多少自炊するが、学校でまで自分の作ったものを食べると飽きてしまうからだ。
 焔の作ってくれた弁当はシンプルだが美味しかった。しょうが焼きと、ほうれん草のおひたし。卵焼きは甲斐好みの、デザートにでもなりそうな甘さ。
 顔もよくて主人公で料理の才能もあるなんて、天は何物あいつに与える気なんだろうか。でも性欲は削った方がいいと思う。

「黒川、あれ」
「ん?」

 鈴木が教室のドアを指差す。後方のドアの向こう。廊下に焔がいた。

「隣にいるの、星野じゃね?」

 焔の隣には星野光がいる。
 星野は楽しそうに笑っていて。


「もしかして正岡のやつ、星野と付き合ってんの?」
「……そうかもな」



 あるべきルートに戻れるのならそれがいいに決まっているのに。
 人をお婿に行けない体にしておいてお前は正規ルートに戻る気か、腹が立ってきた。
 散々好きだと言ってきたくせに。

(嘘つき)


 その日から、甲斐は焔を避け始めた。



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