短編 | ナノ 確かに恋だった


ぼんやりとした記憶だ。
小学生だったころのこと。友達と公園を駆け回って遊んだ。
怪我のたえない俺はしょっちゅう絆創膏を露出した肌に貼付けていたし、それに巻き込む形で友達も絆創膏を貼っていた。

背は俺の方が高かった。力も俺の方があった。いじめられていたアイツを護っていた。
だけどアイツは俺が転びそうになるとその小さな体を俺の下に滑り込ませる。


『ぼくがきーくんをまもるんだ』


そういって笑う可愛いアイツに、ドキリとした。
悔しいかな、それが俺の初恋。






「きーくん、きーくん」

ぎゅ、と背後から抱きしめられる。無駄に成長したこいつに抱き着かれると暑苦しくてかなわない。俺だって成長したわけだから色々と見苦しい感じなわけで。
「何」
「保田と付き合うってホント?」
「……保田『さん』」
「ホント?」
「……まあね」
クラスのアイドル……とまではいかないけれど、それなりに可愛い女の子。告白されて嬉しくないはずがない。
それ故男子からは嫉妬の目で見られている。まあ仕方ないことである。
……けど、告白されたのはついさっきの昼休みで、まだ一時間くらいしか経っていない。噂とはこうも光りのごときスピードで駆け抜けるものなのか。

「何で?」
「何でって……可愛いし」
「俺の方が可愛いし」
「いやお前男だし。それに昔は可愛かったけど今は完璧男前だろうが」
「きーくんのが可愛いし」
「阿呆か」

そんな風に訳のわからないことをわめきながら、結局のところ俺に彼女が出来るのが気に食わないということだ。お前こそ告白されまくっているのだから一人くらい良い人はいないものかね。

「俺が好きなのはきーくんだけだもん」






確かに恋だった
(けれど今はもうときめかない…………はずなんだけどなあ)



お題:確かに恋だった



- 33 -


[*前] | [次#]
ページ:




TOPへ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -