版権 | ナノ
夢物語 [ 68/196 ]

儚い望み

咲かずに散る花のように


哀れな、夢物語






「…ライナさん?」


ふわっと、風が髪を撫でた。
目を開ければ、水色の髪。


「……」


ライナはしばらく、何も言わなかった。



「何か、怖い夢でも見たんですか?」


変わらぬ表情を少しだけ歪ませて、ライナの顔を覗き込む。


そうだ。たしかに見た。
夢でなく、現実を…


化け物だから。だから、幸せを望むなんて笑い話にしかならない。


なのに…



夢を見た。

隣にはリーレがいた。

笑いながら、眠っていた。



ただの日常と化したそれが、あまりに自分にはもったいないことなのだと





「…そうだなぁ」


ライナはフッと柔らかく笑った。


「フェリスが俺の首を切り飛ばす夢」


「………」


瞬間

リーレの顔が固まる。


これはどういう表情をすべきか悩んでいる顔だ。

同情すべきか
笑うべきか


「同情するなら枕になって」

「はい?」



ライナはリーレの膝に頭を乗せ、目を閉じた。


過ぎた幸せだとわかっている。

甘えてばかりでは駄目だとわかっている


だけど…


離れるのはひどくつらくて



今はただ、この幸せに浸かっていたかった。



─end─



[*prev] [next#]
top
TOPへ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -