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好きの意味を教えて(銀魂・銀土) [ 14/196 ]

「好きだ」


告白を、された。
教師になってからそれほど長い時間が経ったという気はしない。かといって短いわけでもなく、それなりに教師をしてきたつもりだった。その長いとも短いともつかない間に生徒からモテたことは……悲しいことにまったくない。いや、恋に恋するお年頃でもある女子生徒たちから「センセ、好きだよー」なんて軽い感じに言われたことならずいぶんあるのだけれど。
つまり教師になって初めて、生徒から告白されたわけなのだが。
……相手が男子生徒なのは、まあ、理想と現実の差というやつなのだろう。


「……坂田」
「俺は、土方先生が好きだよ」

銀髪が目立つ男だった。それはどうやら自毛らしいのだが、その綺麗な銀髪は天然パーマのせいでふわふわ揺れている。触ったら柔らかそうだ。
いつも眠そうにしている男だった。土方が彼のクラスで授業をしているとその度に眠そうに欠伸をしている姿を見た。

好き、という言葉を噛み締める。
好き、という言葉の意味を理解しようとその響きを音に成らないように口ずさむ。


坂田はいつもの眠そうな目を少しだけ真剣なものに直して、再度土方に告げた。

「好き」
「……で、」「ん?」
「で、俺に何をして欲しいんだ?」
「…………んーとね、好きになって欲しい」
「そうか」
「そうかって、つれないっすよ先生〜」


軽い調子で「傷付いた〜」なんて言う。
そんな坂田に、土方はある告白をする。


「俺は、人を好きになったことがない」



学生時代にいつも、誰かから好意を寄せられた時に返していた言葉を。



「……マジで?」
「ああ」
「1回も?」
「そうだっつってんだろ」


人を好きになったことがなかった。誰かを想ってドキドキするなんて思春期特有の病にはあいにく1度も縁がなかった。
幼なじみが一途に誰かを想っているのを見て、きっと自分が恋できない分誰よりも情熱的な想いを誰かに持ってくれているのだと思ったことがある。幼なじみが失恋する度に「次があるさ」と慰めながらも、その気持ちがどうしても理解できない自分にはへどが出そうだった。

人並みに恋人なんてものがいた時もあった。自分を好きになってくれた人ならば、一緒にいれば好きになれるかもしれないと思った。そのどれもが相手にフラれるとう終わりだったこともよく覚えている。


「ホントに?」
「ああ」
「ホントのホントに?」
「ああ」



「俺さ、やっぱり『好き』ってよくわかんなかったんだ。でも土方せんせーに会って、わかった。せんせーが教えてくれたんだ。

だから、



俺が教えてあげるよ!」














好きの意味を教えて
(何だか初めて好きという感情を理解できる予感がした)




2009.09.14

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