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言いかけた言葉は(伝勇伝・ルークラ) [ 3/196 ]




部屋に入ると彼は眠っていた。
疲れているのだろうか。どうもうなされているらしい。
起こした方がいいのだろうか。揺り動かさず、とりあえず声をかける。


「クラウ」


声をかけると額の皺が少し消えた。
そっと頬を撫でる。うなされる声が止む。
本当に自分という存在がクラウの悪夢を打ち消せるのであれば、嬉しいのだろうが。きっと彼の悪夢が消えたのは声をルークのものと認識したからではないだろう。


「……ルー……ク」


……わずかに開く唇が音を作る。
それが自分の名だと理解すると、ルークの口元が自然と緩んだ。

「ルーク……」

再び名前を呼ばれる。今度はその後に続く言葉がありそうだと思い、唇を塞ぐ。やわらかなそれをそっと吸う。けれど彼はまだ眠っているようだった。




言いかけた言葉は
(なんであれ、君の言葉は起きている君から貰いたいというワガママ)



2009.01.07

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