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ウソツキ(勇ライ+シオライ?)
2011/03/24 00:47



※このお話は「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」のパロです

※キャラ崩壊が激しいです

※病んでます

※よく考えたら元ネタの本のネタバレな気がする上にパロになりきれてない矛盾だらけの話







授業中はいつも寝てばかり。
誰とも話さない。ずっと一人でいる。話しかけられても露骨に嫌そうな顔をしたり、不機嫌そうに最低限の言葉だけを口にする。
フェルナ・リュートルーはそんな生徒だった。
クラスメイト達は腫れものに触るように。適度な距離を保つ。彼の過去を知っているからだろう。
僕も彼の過去を知る者の一人である。何せ僕と彼は深い仲だからね……嘘だけど。
授業が終わると彼は相変わらずのスローペースで、しかし誰よりも早く教室を後にする。鞄に教科書やノートの類が入っているとはとても思えない。徒歩で通っていることは知っている。ということは彼には空の鞄を持ち運ぶ趣味があるのだろう。なかなか崇高な思考の持ち主だ。是非見習いたい。ちょっとだけ嘘だけど。



ふらふらした足取りで学校を後にするのをそっと追いかける。
後をつけられる、なんて夢にも思っていないのか彼の尾行は楽なものだった。いや、もしかしたら単に僕の探偵レベルが高いせいかもしれない。これでも将来の夢はしがない私立探偵ってやつで、迷子の猫を見つけ出して食べていきたいと思っていたりするのだ。もしかしたら嘘かも、なんて。
さて、迷子の猫が自宅に着いたようだ。
マンションのセキュリティが少し厄介だったが彼が開けたドアが閉じないうちにそのまま入れば済む問題だった。彼は怪訝そうにこちらを振り返ったが、すぐに前を向くとエレベーターに乗り込んだ。もう少し警戒心というものを持ってもいいと思うんだけどなあ。
ここからが問題。全速力で階段を駆け上がる。2階。エレベーターは3階へ向かっている。また駆け上がる。3階。エレベーターは4階を目指すから、僕もまた走る。4階。ようやくエレベーターが開く。降りてくる彼に見つからないように、後をつける。
部屋はエレベーターと階段のすぐ近く。いつ暴漢に襲われても問題ないですね。いや彼なら逃げる必要ないと思うけど。嘘じゃないんだなあこれが、残念ながら。
さて、彼がもたつきながら鍵をあけ、ドアを引く。
彼の体が玄関に入り、ドアを閉め切る一瞬前に、足を捻じ込んだ。

「………………」

彼の表情が、初めて変わる。

「なかなか綺麗な部屋だね。もっと散らかってるかと思ったけど意外と片付いてる」
「誰だ」
「あ、でも物がそんなにない。寂しいな。雑貨とか買わないの?」
「出てけ」

冷たい表情で彼が手にしたのは、おやおや。

「ナイフは危ないって」
「出てけ」

台所から持ってきたのは、果物ナイフだろうか。小さいけれどよく切れそうだ。どうやら彼は僕を殺して食材にするつもりらしい。きっとこの調子だと冷蔵庫も空っぽだろうから僕は飛んで火に入る夏のなんとか、ってやつだったんだろう。この後僕は心臓を一突きにされて即死し、一晩鍋でじっくり煮込まれてシチューにされてしまうのだ。嘘、だといいね。ホント。
ではここで奥の手と行きましょうか。
「ライナ」
耳元で囁く。
それだけで彼は、ナイフを取り落とす。ナイフは無事、何もない床の上に落ちた。これがどちらかの足に突き刺さったりしていたら大惨事である。危ない危ない。

「…………アスルード?」

彼の目が大きく見開かれる。

「うん」

頷いてやる。
ライナと言うのは特別な呼び名。
今では僕しか呼ばない。

「アスルード」
「うん」
「アスルード」
「うん」
「……今までどこ行ってたんだよ、馬鹿」
「ごめん」

本当はずうっと同じクラスにいたんだけど。ライナが気づかなかっただけで。
でもそんなこと言ったら再び果物ナイフが突きつけられるから、黙っておく。
ただ黙ってライナの髪を撫でる。
ライナは僕に抱きついて、すごく嬉しそうに笑った。

「おかえり、アスルード」
「ただいま、ライナ」

これにてめでたしめでたし。

嘘、もうちょっと続く。



   ***



「アスルード、制服同じ」
「うん」
「クラスは?」
「A組だよ」
「…………」
「どうしたの?」
「もっと早く声かけてくれればよかったのに」

そうしたら、修学旅行の班だってなーと不満そうに呟く。ううむ、僕のライナはやたら可愛い。

「自由行動だってあるだろ?」
「そうだけど……」
「どうせ部屋も一緒になれないし」
「うー」
「その代わり、ライナの家に毎日遊びに来るよ」
「ホント?」
「ホントホント」
「じゃあさ、一緒に住もう?」
「それは」
「それは?」
「……まだ早いかな」
「アスルードやらしい」
「えー」

やらしいことなんて一切考えてないのにライナはくすくすと笑い始めた。いや、まあ、正しい青少年の在り方としては、少しくらい考えたりするわけで。いや、相手男の子だけど。それでも好きな相手なんだからそういうことを考えたりもするのだ。
というかライナだってそういう発想をしてしまうのだから結構なムッツリさんではないか。とか口にする前に果物ナイフを片付けてしまわないと。

「ほら、まだ準備できてないし」
「そっか」
「ごめんね」
「じゃあいつからならできる?」
「……そうだね、なるべく早くするよ」

しかし会うのが小学校以来、つまりざっと三年ぶりくらいだというのに、よくもまあこうトントンと話が進むものだ。いや、僕もそうか。

泊る用意もしていないし家に帰らないといけないから今日は家に帰ると伝えるとライナはものすごく不満そうだった。けれどそんな顔も可愛いと思う僕は末期なのかもしれない。


   ***



ライナは壊れている。
受け入れがたい辛い現実を、幼いころ、目の辺りにし、壊れてしまった。
……まあ、僕も少なからず壊れてるんだけど。
人間なんてものは誰しも、壊れているんだと思う。自分では治せないし他人にも治せない。壊れたものが更に壊れて、なんとなく治った気がして騙し騙し生きている。理解できないものを理解したふりをして生きていく。そんな絵空事を考える。
現実にはきっと壊れているのは僕とライナだけ。
まあ、ライナと一緒ならいいか。

「おはよう」

昨日の翌日は日曜日だったので手土産とお泊まりセットを持って参上してみた次第でございます。

「……誰」

昨日も見た冷たい目がこちらをとらえる。あれ、雲行きが怪しい。
「おはよう、ライナ」
もう一度声をかけるとライナの目が大きく開かれる。そうして一度ぱちりと閉じると、再び開かれ――同時に、抱きつかれた。

「アスルードおはよう」

ぎゅうぎゅうと締め付けられてお花畑が見えました。
お花畑の向こうで死んだ父さんと母さんが手を振ってる。こっちにおいでって。しかし僕には愛しのライナがいますのでと背を向けて走り出し、なんとか現実に戻ってきました。ほぼ嘘ですが。

「おはよう」

改めて言うと、ライナの髪を撫でてやる。
ライナは嬉しそうに目を細めた。


   ***



「アスルード、好き」
「うん」
「アスルードは?」
「好きだよ」
「そっか」

ライナは嬉しそうに微笑む。邪気の全く含まれない笑みは、彼がそれだけ壊れてしまったことを突き付ける。それを見て僕は過去の自分の愚かさを呪う。ライナが手に入っても壊れていたら何の意味もないのに。

なんて、嘘だけど。


「フェルナ」


ライナに聞こえないように、そっと囁く。
『愛』という彼の名。それを僕が口にすると罰が当たる気がした。
嘘つきの僕が『愛』を口にするなんて、罰が当たる。だから、聞こえないようにそっと。


どうして彼はこんなにも純粋なのだろう。どうして彼はこんなにもアスルードを好きなのだろう。
アスルードを殺したのは彼だというのに。

「馬鹿なこと、してるよな」

僕は、シオンなのに。









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