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はじまりはシオライ(伝勇伝・シオライ)
2020/05/21 02:25

ライナ・リュートは何よりも睡眠を愛することとほんの少し腐男子であることを除けばごくごく普通の男子高校生だった。それはもう、自分ではそれが自慢だったのだけれど。
それで、そんなライナが実はスーパーマンでした、なんてことになるわけでもなく。彼の日常は日常のまま流れていく。

「君が欲しい」

にこにこ笑って手を差し出してきたのはこのローランド高校の生徒会長様で。
昼休みにいつものようにフェリスやキファとじゃれあいながら弁当を食べていたはずなのに。いつの間にか周囲の視線はライナに注がれていて。誰もがそこそこに騒いでいたはずなのに、今は息を飲む音さえ聞こえない。
キファが何か言いたげなのを押しやり、「会長様、俺、ノーマルなんで」と返す。

会長様は目を丸くして、それから女子が黄色い悲鳴でもあげそうなやわらかな笑みを浮かべて見せた。
「ああ、僕はシオン。そういうつもりじゃなくてね、君を生徒会に誘いに来たんだ」
「意味わかんないっす」
「同い年だから普通に話していいよ」
「面倒くさい」
「残念だなあ。また誘いにくるね」
にこにこにこにこ。
まるで宇宙人と話しているような、話の通じなさ。

去り際に会長様はそっとライナに耳打ちした。
「個人的にも君に興味があるしね」






「…………何この展開」

全然萌えないんだけど、とライナはげんなりしていた。

「この夏はシオライで決まりかあ」
不穏なことを呟きながらノートに何かを書き込んでいくキファ。おそらく先ほどライナが止めなければ何かまずいことを叫んでいたに違いない。「萌え!」とかなんとか。

「生徒会ならキファのが向いてるし」
「まあ確かにライナが選ばれる意味が分からないのよねー。どうせ雑用係だろうけど。やっぱり気になるから側に置きたいとかじゃないかしら?」
「だったら転校生だろ」
「王道転校生かー。私脇役受けが好きなのよね」
「俺も」

いつものようにキファと語っているとフェリスが首を傾げる。

「私はみたらしが好きだ」
などと主張するフェリスの頭をキファが撫でてやっていた。

とりあえず最後の一言がキファに聞こえてなくてよかったなあとライナはため息を吐いた。この腐女子に聞かれていたらどうなっていたかわかったものではない。
自分が第三者としてこの状況に遭遇していたらどんなによかっただろうか。きっと、キファみたいに純粋に楽しめただろうに。

BLは美味い。ただし自分が絡まないものに限る。


そう、思っていた。



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