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You may cry. ――C(進撃の巨人・リヴァエレ)
2011/11/05 22:37




生き残ることが出来たことを幸運と思うか否か。やはりついているのだろうとは思うのだが、素直に喜ぶこともできない。死を覚悟しての行為の気恥ずかしさからか。
そもそも自分の生をかけてエレンを生かそうとしたのだから。どちらも生き残ってハッピーエンド、などと楽天的に考えることもしがたい。というか、やはり恥ずかしい。
それでも生きていて良かったと素直に思えるのは、



「兵長」
目を覚ますと同時にその姿が視界に入ってきたから、最初、リヴァイは夢を見ているのかと思った。けれど次の瞬間に体中に走った酷い痛みから、すべてが現実だと知る。
エレンはこちらを見て嬉しそうに微笑む。
「よかった……」
それは本当に安堵したような笑みで。なるほどこいつは自分に心底惚れているのだなと理解する。当然だ。
そうでなければ命を賭けて、勝つことなどできなかっただろうから。
エレンは何度も良かったと繰り返して、それから「あ、水持ってきますね」と慌てて走り出す。
……どうして生きているのだろう。
あいつのために死んでやってもいいなんて、思ってしまったくせに。

リヴァイの生還を喜んだのはエレンを始めとするほとんど全員で、唯一の例外と言ってもいいのがミカサだった。起き上ったリヴァイを目にして、あからさまに舌打ちなどしてくるものだからわかりやすい。
殺せなくて残念だったなと笑ってやろうかと思ったが、やめる。
リヴァイが生き残った原因は、あの少女だろう。
もちろん死にかけた原因も彼女に違いないのだが。そのまま刺した刃を軽く捻ってしまえば良かっただろうに。それが少女の愛する少年に刃を向けたことと、自分の愛する少年へ刃を向けたことへの罰だと思ってさえいたから。
それなのに彼女はほんの少しの甘さを見せ、リヴァイを生かした。
彼女はそれを後悔しているようでもあったが、だからといって今もまた大人しく刺されてやるつもりはない。もしも次の機会があるならそれはまたエレンが暴走してしまった時だろう。
「兵長、お粥持ってきました」
まだ傷が完全に治ってないからと粥を持ってこられてしまう。更に匙を口元に運ばれていると少し離れた所から殺気を感じた。
甲斐甲斐しく世話してくれるエレンはまあ有難いし、何より好意を持った人間の世話なのだから嬉しくないはずがない。ただ、悲しいほどに色気がない。いっそのことコスプレでもさせようかと考えたが、殺気の主に今度こそ殺されそうになってエレンを泣かせるだけだろうと諦める。ああいうのは二人っきりでしてもらうから楽しいのだ。
空いた皿を片づけに行ったエレンの帰りを待ちながらメイド服とナースだとどちらがいいだろうかと真剣に悩んでいると、廊下から話し声が聞こえてきた。

「だって、兵長が死ななかったから、ミカサが殺人犯にならなくて済んだだろ」

頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
なるほど、彼の涙はリヴァイの死ではなくミカサが罪を犯したことへの涙だったのか。そう思えばすんなりと納得できてしまって、過去の自分を殴りたくなる。
がらにもなく純愛めいたものをしようとしたのがいけなかったのだ。そうだ、がらでもない。こんなこと。

「躾が足りなかったみたいだな」

愛だの恋だの、そんなことはいらないのだ。ただ自分に従順になるように躾けるだけ。自分だけに尻尾を振るように。









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