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You may cry. ――A(リヴァエレ)
2011/06/14 23:18

※パターンA 兵長が死ぬ場合



その人が死ぬなんて考えたこともなかった。
誰よりも強くて。誰よりも前で、巨人を相手にして。ちっぽけな自分とは比べ物にならないほどの、人類の希望だと。

乱暴な口調や行動からは想像できないほど優しくて。部下が死ぬことを許せなくて。
遠くで見ていた時とは違う。
ずっとずっと、カッコイイ人だと思った。

だから彼は死ぬべきではないし、死なないと思っていたのに。





気がつくと泣いていた。
何が起こったのかもわからない。わからないのに、体だけが先に理解して涙を流していた。
こんなに泣いたのは久しぶりだ。
久しぶりだけれど、どうして自分が泣いているのかがちっともわからない。
自分は、戦うために巨人化して。

……それから、どうした?

いつだったか、巨人化したエレンがミカサを襲ったと知らされたことを思い出す。まさか。また、暴走して。
考えながらも涙だけは止まらない。どうして。どうしてこんなに悲しくて。目に映るものを信じたくなくて。
「兵長」
呼びかける。
「リヴァイ兵長」
呼びかける。
「へいちょ……」
刃が、リヴァイを貫いていた。
この人が怪我をするなんてそれだけで嘘みたいで。こんな化け物じみた人がどうして死にかけているのかちっとも理解できない。
なのにその刃がミカサのものだということだけはわかってしまって。
どうして。
「オレが、ちゃんとできなかったから」

エレンを殺すのはリヴァイの役目だ。
エレンを守るというのはミカサの口癖だ。

でも、どうして。
リヴァイならミカサの攻撃を避けることくらいできただろうに。

「……よく、戻ってきた」

どうしてこの人はがらにもなくエレンの頭を撫でてくれているんだろう。
どうしてこの人は死んでしまうのだろう。





   ***





「エレン、怒ってる?」

リヴァイが息を引き取っても、しばらくエレンはそこから動かなかった。ただ涙だけはようやく流し切ったようで、ひどく冷たい目でどこか遠くを睨んでいた。
彼の大切な人を殺した自分を憎んでいるのだろうとミカサは思った。
でも、そうしなければ殺されていたのはエレンだ。ミカサはエレンを守ったにすぎない。

……本当はわかっていたけれど。

あの男が選んだのはエレンの死ではない。自分の死だ。ミカサにはそれがわかってしまった。
リヴァイにエレンを殺す気などなかった。殺すふりをしながらこちらを窺っていたのだ。「殺せ」と。
そうでなければ、泣いたエレンを慰めなんてしない。馬鹿な男だ。自分の命を簡単に差し出して、エレンを守ろうだなんて。自分の命でエレンが正気に変えると信じていただなんて。
それでもミカサは、同じことを自分がしたところで、エレンは我に返らないだろうと思った。
だからこそ、彼女はリヴァイを貫いてしまったのかもしれない。

「ミカサ、ごめんな」
「……なんでエレンが謝るの」
「オレがちゃんとできないから、ミカサにも辛い思いをさせた」

そうしてエレンがミカサの頭を撫でる。

「もう覚悟はできてるのに。きっと甘えてたんだ。もう、迷わない」
そう言ってどこかを睨む彼が遠くに感じて、ミカサは彼が死ぬ覚悟をしてしまったのだと理解した。







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