※not現パロ、死ネタ注意
笹山視点


たくさん意地悪をした。たくさん暴言を吐いた。たくさん喧嘩した。たくさん仲直りした。たくさん優しさを捧げた。たくさん愛を注いだ。

数々の名前との思い出が蘇ってくる。1年の出会ったばかりの頃は名前が嫌いだった。鈍臭くて失敗ばかりの足手まとい。そんな印象しかなかった。それも6年になれば打ち消されて名前は鈍臭くなんかなくなってたし失敗も少なくなってた。だから僕のカラクリに散々引っ掛かっていたのに今ではその量が格段に減った。それが面白くなかった。面白くなくて、名前に当たった。

「名前なんて、くノ一に向いてないよ。今からでも辞めれば?」


今更だけど、酷いことを言ったという自覚はあった。少なからずくノ一としてのプライドを持っていた名前にとったら僕の軽はずみの暴言だって許し難いこと。僕の言葉で名前は今も、今までもずっと傷付いてきた。

「あの時はごめん」

なんて、余計な言葉は言えるのに、謝罪の言葉は言えなかった。それくらい僕は名前に避けられていた。それくらい名前は僕に怒っていた。もしかしたら嫌いになっていたのかもしれない。これは僕と名前の今までにないくらい1番大きな喧嘩だった。



結局、僕は名前に謝れず、ずるずると時が進んでいく。無意識に名前の存在を探している僕は不審に思うことがあった。

名前がいない。
名前と仲の良いくのたまに聞いてみると、名前は忍務行ったそうだ。今日で三日目。

四日目。名前は帰らない。
五日目。まだ帰らない。
六日目。まだ帰らない。
七日目。一週間経った。まだ帰らない。
八日目。可笑しい、まだ帰らない。
九日目。名前が死んだ。

その報告を受けた時、僕は絶望した。それと共に後悔した。珍しく泣いて、泣いて泣いて泣いて。自分のした事を悔やんだ。一杯一杯になった僕の頭は正常に動かなかくて、団蔵にまで心配された。

最後が喧嘩で終わるなんて、そんな惨めなことあるか?自分の犯した過ちにいたたまれない気持ちになる。

からっぽの頭で過ごして数日。名前と一緒に忍務に行ったというくのたまが僕の元に来た。

「ねぇ笹山。私さ、名前の最後の言葉、聞いたんだ。」

「……へぇ。」

「知りたいんじゃないの?」

「僕は、別に、」

唯々謝りたいだけだ。

「好きだったよ、誰より。」

「…え。」

「名前が言ってたの。これって笹山のことじゃない。私、絶対そうだと思うわ。」

それだけ、と背を向けるくのたまにもう一度聞きたい。好きだったよ、誰よりって…そんなはずない。僕は名前に散々酷いことをしてきたのに。時には目も当てられないようなことだって。


名前、名前、名前。もう遅いけど、ごめん。本当にごめん。本当は好きだったのに、僕は名前傷付けてばかりだった。

「好きだったよ、誰より…か。」


僕もだよ。

空を見上げてもそこに名前がいるはずもなく、僕は重圧に耐えながら後悔の人生を歩んだ。その生涯、僕は名前のことを片時も忘れたことはない。




title.確かに恋だった 様より
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