▼ けふをかぎりの いのちともがな
「真ちゃん」
高尾は緑間の方へ振り向いてにかりと笑った。
「何なのだよ」
「俺、幸せだ」
俺もだ、と言おうとしたが口を閉ざす。
時々不安になるのだ。
俺は本当に高尾とこのような非生産的な関係を保っていていいのか。
いつか高尾の足を引っぱってしまう過去になってしまわないか。
「真ちゃん」
高尾は彼の手を強く握った。
「真ちゃんは、幸せ?」
この暗く透き通った美しい瞳は、俺の全てを見ている。
それだけで、それだけでも俺は。
「―――ああ、幸せなのだよ」
忘れじの行く末までは難ければ 今日を限りの命ともがな
「だめだよ、真ちゃん」
彼はそう言って笑った。
「今死んじゃったら、俺は誰を愛せばいいんだ」