和歌シリーズ | ナノ


▼ みをつくしても あはむとぞおもふ

「なあ高尾ってさ」
クラスメイトの吉田が、まるで「今日の晩飯がさー」というようなとても軽いノリで、そして何でもないように高尾の核心をついた。
「緑間のこと好きだよな」
好き?
「あー、そりゃ俺のエース様だし?」
「そうじゃなくて、甘酸っぱい方な。気づいてるんだろ?」
あれ、なんでバレてるの?
ずっとずーっと隠してきた。これは愛でも友愛なんだって自分に言い聞かせて。
だから真ちゃんに絶対迷惑をかけないようにしようって、思ってたのに。
「あのさ、厳しいこと言っちゃうと」
「うん?」
「そうやって隠していること自体が迷惑なんじゃね?お前のその緑間に対する執着心がもう異常なんだよ」
「それはっ・・・!」
ほら、と吉田は続ける。
「緑間って案外察しが良いから気づいてるかもな」
「まさか」
高尾はそうやって笑い飛ばしたが、ふと視線が向けられていることに気づき、ちらっと振り向く。
しかめっ面の緑間と目が合った。
まさか。
まさか真ちゃんは、気づいている?
「たーかお」
吉田はにこりと笑った。
「諦めて、告白しちまえば?」
やられた、と思った。
吉田の目的はこれだったのかよ。

わびぬれば今はた同じ難波なる みをつくしても逢はむとぞ思ふ

どう思われても良い。
だからちゃんと伝えたい。


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