もうひとつのプレゼント
 

『で、どうなの? うまくいった?』
 電話越しにも相手が興奮しているのがわかった。受話器から鼻息まで聞こえてきそうだ。興奮する気持ちもわかるが、とエルヴィンは笑った。
「うまくいかないわけがないだろう? やっとリヴァイの初恋が実ったんだから」
 数日前、帰宅したエルヴィンは仰天した。
 真冬の寒空の下、雪もちらついているというのに、ミカサが玄関先で待っていたからだ。「お待ちしてました」と鼻も頬も真っ赤にしたミカサは頭を下げた。聞けば、いつ帰るとも知れないエルヴィンを待って何時間もそこにいたという。慌てて彼女を招き入れて部屋を暖めた。
 そうして彼女の来訪の理由を聞いたエルヴィンは、唇が緩むのを止められなかった。
 ミカサの相談とは、なんとリヴァイに返事をしたいので協力してほしいというものだった。それもエルヴィンがそうあってほしいと期待していた「イエス」を!
 これで協力しないわけがない。早速ミカサの要望を聞き、そのために手を回した。ミカサに合鍵を渡し、リヴァイが早く帰宅できるようにそれとなく仕事の流れを変え、リヴァイの部下たちにも協力を仰いだ。リヴァイは『昔』もよく部下に慕われていたが、それは今生でも変わらない。「リヴァイの幸せのために協力してもらえないか」と持ちかけたら、詳しいことは何も話していないのにふたつ返事で協力を取り付けられた。さすがはリヴァイだ。
「今年のバースデープレゼントには君を、と思っていたのだけどね、それよりよほど良いプレゼントができてしまった」
『そりゃまぁそうでしょうよ。……でも、こういうのが巡り合わせっていうのかな』
「ん?」
『だってそうでしょ。これまで誰とも会えなかったのに、ミカサに再会して、エレンも、記憶はないけどヒストリアもいるんでしょ? おまけにおんなじタイミングで、正反対に離れた国なのに私はリヴァイの論文を見つけてさ。これが巡り合わせじゃなくてなんなのさ』
「ああ、そうだな」
 それで『彼女』はエルヴィンに連絡を取ってきた。地位はこういうときに役に立つ。地位がある分捜しやすい。
『でも、ホントよかったよ。リヴァイの恋が実って。こんなに嬉しくておいしいことはないね! 会うのが楽しみだなぁ!』
「ほどほどにな」
『わかってるって! ……残念なことにチケットが取れなかったから少し先になっちゃうけど、年が明けたらあなたたちに会いに行くよ。それまでリヴァイには内緒にしておいて。リヴァイの驚く顔を見るのも悪くない』
「もちろんだよ。君はもうひとつのサプライズだ」
『うん、それじゃあ、そろそろ切るね。あなたも忙しいんでしょ? メリークリスマス、エルヴィン』
「メリークリスマス──ハンジ」



2015.3.15


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