You have bad taste
「ソフィー! モーガ〜ン!」
空飛ぶ城に、主の陽気な声が響き渡りました。
ドタバタと廊下を走る音が聞こえ、昼食の用意をしていたソフィーとモーガンは顔を上げ、階段を眺めやりました。
「どうだい!?」
さらに荒々しい音を立てて階段を駆け降りてきたハウルは、両腕をバッと広げ、妻と息子に尋ねました。
「どうって、ハウル、あんた、それ……」
「おとうさん……」
夫の姿にソフィーは顔を引き攣らせました。父親の姿にモーガンも顔を引き攣らせます。
それもそうでしょう。
ハウルは妙に艶のある紫の布地に白い水玉を散らした上着を羽織り、ショッキングピンクのズボンをはいていたのです。
「ハウル、おいらもそれはちょっと……」
さしものカルシファーも顔を引き攣らせました。
そんな家族の反応にハウルはきょとんとします。
「あれ、どうかしたかい?」
「どうかしたかじゃないわよ、ハウル……あんた、それはいくらなんでもないわよ」
「そうかなぁ? モーガンもそう思う?」
ハウルは首を傾げて、モーガンに聞きました。
モーガンはソフィーのスカートの端っこをつかみながら、ハウルを見つめました。
「……うん。おとうさんって、しゅみわるい」
その一言は破壊的でした。
ハウルは落ち込んで緑のネバネバを大量に出し、ソフィーがカンカンになりながら緑のネバネバを片付け、帰って来たマイケルもそれを手伝うことになったのです。
ソフィーに頼まれ、風呂場に熱い熱いお湯を送ったカルシファーの隣で、モーガンは言いました。
「おとうさんはあんなおようふくより、空とか海とか、そんな色のおようふくのほうがカッコイイよね」
2010.8.6