やすらかに
命。
いのちとはなんて儚いものなのだろう。
ぽろぽろと、天子の頬を涙が伝う。
「天子様……」
星刻はそれを、痛ましい気持ちで眺めていた。
先日、朱禁城の庭園で小鳥が怪我をしていたのを天子が見つけたのだ。天子は小鳥を拾い、かいがいしく世話をした。
餌を与え、怪我の手当てをした。
もう一度、空へ羽ばたけるように。
そう願って。
けれど、天子の願いは叶わなかった。
小鳥が死んだのだ。
あっけなく、冷たくなってしまった。
「どうしてぇ……っ」
星刻に縋りつき、そう叫ぶ天子に星刻は言った。
「天子様は十分、頑張られました。天子様のお優しい心はきっと、小鳥に伝わっていますよ」
「ほんとう……?」
星刻は微笑む。
「命を失ったことを悲しみ、嘆くことができる。それはとても素晴らしいことです。簡単なようでいて、実はとても難しくもある。他者を心から慈しむということは。ですが、天子様はそれをわかっていらっしゃる。ですから、きっと小鳥も天子様の優しさを知っていましょう」
膝を折って、星刻は天子と目線を合わせる。
「祈ってください、安らかに小鳥が眠れるように」
「……うん」
天子は涙をぬぐい、頷いた。
小鳥の亡きがらを振り返る。
「謝謝、」
2010.6.1