揚羽蝶



 市場を視察で訪れた星刻は、そこで見つけたものに眉を寄せた。
「星刻〜」
「天子様」
 幼い顔を綻ばせて、天子が星刻に駆け寄ってくる。
 その後ろには香凛が控えている。彼女は少し離れた場所から星刻たちを見ていた。
 天子は興奮に頬を染める。
「市場はどうでしたか!?」
「とても賑やかでしたよ。途中喧嘩の場に遭遇しましたが、そのほかには何事も」
「ええっ? 大丈夫だったのですか!?」
「はい、天子様、ご心配なく。すぐに収まりましたから」
「よかった。争いごとなんて、ないほうがいいです」
 星刻は頬を緩め、懐から紙包みを取り出した。
「天子様、よろしければこれをどうぞ。お土産です」
「わ、わたしにですか?」
「はい。天子様によくお似合いになると思って」
 かさ、と紙包みを開ければ、揚羽蝶を模した髪飾りが出てきた。
 天子が目を丸くしていると、星刻が髪飾りを彼女の銀髪に飾った。
 それは銀の髪によく映えた。
「よくお似合いです、天子様」
「あ、ありがとう……星刻」
 髪飾りに手をやって、天子は先ほどとは違う意味で頬を染めた。



2010.5.26


 
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