かみさま、



 わたしの願いは、そんなにわがままなものだったのでしょうか?
 わたしの願いは、ひとつだけなのに。
 それさえ叶えば、わたしは何もいらなかった。それが、わたしのしあわせだったから。
 でも。
「しん、くー」
 そろりと、その頬に触れる。
 その頬は冷たかった。
 昨日まで確かにあったぬくもりを、感じることができない。感じられない。
 ねえ、どうしてですか?
 あなたはわたしを、とこしえに守ると誓ってくれた。
 わたしはあなたと、たくさん外の世界を見たかった。
 あなたがそばにいてくれる。
 それだけが、わたしの願い、望みだったのに。
「しんくー」
 顔を覆う。
 もうあなたの声を聞けない。
 もうあなたの笑顔を見られない。
 もうあなたに触れられない。
 もうあなたは──そばにいてくれない。
 これは、罰なのでしょうか。
 わたしの罪に対する。
「星刻」
 もう一度、頬に触れる。
 涙が伝った。
「しん、」
 これは罰なのね。わたしの罪への。
 わたしはこの国の天子。
 なのに、わたしは民よりもあなたが大事だった。あなたが、あなたさえいてくれるなら、それだけで。

 そんな愚かな君主だから、かみさまが罰を下したのね。

 だけど、罰を下すなら。
 それを受けるのは、罪を犯したわたしのはずなのに。

 ねえ、かみさま。
 どうして、この人だったのですか。
 わたしのいのちじゃなくて。

 ただ、涙だけがこぼれた。



2010.5.25


 
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