セシル・パニック☆
少し疲れが溜まってたんだ。
人より体力があるからって、無理するんじゃなかった。していなければ、ぼくはいま、こんな窮地に立たされていなかったのに!
スザクは目の前に広がる鮮やかなまでに毒々しい紫色を見、激しくそう思った。
後悔の念で胸一杯のスザクの前には、ニコニコと輝く笑顔のセシルがいる。その後ろでは、いつになくスザクを心配するロイドの姿がある。
「自信作よ、スザクくん。食べてみて」
「……セシルさん、これはなんですか?」
「お粥よ。日本では風邪を引いたとき、お粥を食べるって聞いたから」
「……どうして、紫色なんですか? 一般的なお粥は、限りなく白に近かったと記憶してるんですけど」
「だって、普通のお粥じゃつまらないじゃない? 私なりにアレンジしようと思って、ブルーベリーと赤紫蘇を入れてみたの。それから、紫イモも」
うへえ! とロイドが声を上げる。
入れるなら、紫蘇だけにしてほしかったなぁとスザクが考える。
「あの……」
「スザクくんのために作ったのよ」
ね? と、セシルは笑う。
スザクはその笑顔を振り切れるほど、女性に冷たくなれなかった。
結果。
「あら、スザクくん、大丈夫? 顔色が悪いわよ?」
「く、枢木准尉! 枢木スザク、早く吐き出すんだ! キミ、顔が土気色だよぉぉぉ!」
「…………っ」
親友からことあるごとに体力馬鹿と言われ、マシンガンの弾をよけたあげくに壁を走る男枢木スザクはこの日、生死の境を彷徨った。
2010.5.24