秘密の恋人



「あーあ、それにしても残念だわ」
「何がです? 会長」
 彼に、彼の声でそう呼ばれるのも、今日が最後。
 私はもう『生徒会長』じゃなくなる。
 私の卒業イベント『キューピッドの日』で、ルルーシュとシャーリーは学校公認のカップルになった。シャーリーには幸せになってもらいたいし、お似合いだぞって言ってあげたいけど。やっぱりちょっと悔しくって、少しだけわがままを言ってしまった。
 わがままを言って、『後片付け』の名目で私は彼と生徒会室にふたりきり。
「んー? 私も、ルルーシュの帽子ほしかったなーって思って」
「な、何を……」
 その雪のように白い頬を真っ赤に染めて動揺するルルーシュは、私なんかよりずっと綺麗でかわいくって。神様ってホント不公平よね。
 ルルーシュはブルーとピンクの帽子を手に抱えたまま、黙り込んじゃった。
 あら、まだからかってもいないんだど。
「じゃあ……」
「ん〜?」
 何か考えていた様子のルルーシュが、ぽつりと呟いた。
 私に近づいて、その宝石みたいに綺麗なアメジストの瞳で私を見つめて──。
「え……?」
 そして、ルルーシュは私の頭にピンクの帽子を乗せたの。自分もブルーの帽子を頭に乗せて。
 まさか、とか、そんなわけない、とか、そんな言葉が頭を駆け巡ったわよ。
「二股なんて俺のキャラじゃないし、シャーリーにも悪いけど……今日は会長のための卒業イベントですから。これは俺たちふたりだけの、秘密の『キューピッドの日』ですよ」
 そうやっていたずらっぽく笑うルルーシュが、とってもかっこよく見えちゃった。
 せっかく、ルルーシュが言ってくれたんだもの。お言葉に甘えさせてもらうわ。だから……ごめんね、シャーリー。
 心の中で可愛い後輩に謝って、私はルルーシュのブルーの帽子に手を伸ばす。奪った帽子を掲げて仁王立ち、そして高らかに宣言した。

「ルルーシュ・ランペルージの帽子は、このミレイ・アッシュフォードがもらった!」

 ルルーシュが優しく微笑む。
「これで俺たちは『秘密の恋人』ですね」
 ああもう、堪らなくなっちゃうわね。
 たとえこれが一日限りの夢だったとしても。

 あなたのそんなところが大好きよ、私の皇子様!


2008.7.15


 
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