「なあ神童」
「なんだ?霧野」
「これどういうことって…何が?」

とぼけやがって、クソ神童が。
せっかく初詣に誘われてうきうき気分でいたのに。年明け早々、憂鬱な気分だ。

「…なんで部員全員集合になってんの?」
「だってみんなで来たほうが楽しいだろ?」
「俺はお前と二人で行くと思って誘いを受けたんだよ!」

目の前にははしゃぐ部員たち。おみくじで大吉を引いた倉間を浜野が羨ましがってたり。末吉をひいた速水はまたネガティブになってたり。車田と天城は露店に夢中だし。相変わらず一年組はうるさいし。
ムードのひとかけらもねえ。

「ほら、霧野も参拝しに行こう」

なんだこいつ、鈍すぎる。一応付き合ってるのに、二人で過ごしたいとかそういう願望はないのだろうか。
それにしても人が多い。はぐれると困る、という建前で神童の手を握った。その瞬間、俺の冷たい手に神童の体温が広がっていく。繋がれたことに驚いたのか、冷たい手に驚いたのか、神童は肩をびくりと揺らした。

「ちょ、霧野…」
「はぐれたら困るだろ。ごめん、嫌だったか?」
「…嫌、じゃない」

みなさーん!!神童は可愛いですよー!!
と、叫びたくなる衝動に駆られた。横顔しか見えないけど、栗色の髪の毛から見える耳が赤く染まっていた。さっきまでもやもやしていた気持ちが消えていく。
賽銭を入れて、お願い事を頭の中で唱えた。欲張りだから色々と頼んでしまうけど、叶えばいいな、と神様に期待する。

「神童何お願いした?」
「んーサッカーのこととか、ピアノコンクールのこととか、家族のこととか?」
「俺もそんな感じだけど…神童のことも頼んだ。聞きたい?」
「えっ…う、うん」

俺は神童の耳に顔を近付けて、誰にも聞こえないように、小声で言った。
「今年も神童と、ヤれますように」
すると神童はふるふると身体を震わせ、真っ赤な顔で俺の肩を思いっきり叩いた。「馬鹿!霧野のエッチ!すけべ!えろすけ!!」今年も神童は可愛いなあ。なんて馬鹿なことを思いつつ、本当に願ったことを言った。「本当はずっと、神童と一緒に居られますようにって願った」すると神童は少しだけ涙を浮かべている目を大きく丸くして俺を見たあと、下を俯いて「俺も、お願いした」って言ってくれた。
きっとこの願いは、叶うだろう。

「なにあのホモップルきめえ」
「マサキ嫉妬してるの?」
「うるさいよ天馬くん」
「つるぎ〜俺たちもホモップルしようよ〜」
「はっ恥ずかしいこと言うなよ!」
「うわっここにもホモップルいた。やだねえ、信助くん」
「僕にふられても困るんだけど…」

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