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23


「おい、ゴーグル女」


放課後、俺は談笑しながらデクと廊下を歩くゴーグル女を呼び止めた。


「ゴーグル女って、いい加減それやめてよね…。どうしたの?」

「ちよっとツラ貸せや」

「えー…」


ゴーグル女はちらり、とデクを見た。さっさとしろよ、てめぇはお呼びじゃねぇんだ空気読め。
そう睨みつけると、察したらしいデクはあわあわと両手を振った。


「ぼ、僕は校門のところで待ってるから!」

「ごめんね、いず。すぐに行くから待っててね」


すたこらと逃げるように去って行ったデクを横目にゴーグル女の腕をつかみ、歩く。「ちょッ、何急に!?こけるこける!」後ろからなんか抗議みたいなのが聞こえた気がしたが無視だ、無視。

適当な空き教室にゴーグル女を放り込んで俺も滑り込む。相変わらず見えてんのかわかんねぇ糸目がキョロキョロと周囲を見渡しているが、生憎様、てめぇが俺の隙をついて逃げれるような状況は作ってやってねぇよ。


「聞きてぇ事がある」

「な、なに…?」

「…てめぇ、一体何を隠してやがる」

「は、…」


心底意味がわからん、と言いたげに顰められたゴーグル女の眉だが、大人しくはぐらかされるわけにはいかない。
そもそも、いつも何かがおかしいと思っていた。ゴーグル女がデクと俺の間に割って入ってきたとき、クラスメイトのモブ共が勝手にデクをからかっていたとき。高確率でゴーグル女が近くにいるときに自分の視界がわけのわからない風にぐるり、と回る。ただ回るだけじゃない、視界が“入れ替わる”ように回るのだ。

そして、昼間にゴーグル女から聞こえた不思議な機械音。あの時は他のモブ共の喧騒が喧しかったが、あいつの至近距離にいた俺だからこそ聞こえた音は、今思い返してみれば中学の時に何回か耳に入ったものだった。

電撃が個性であるこいつにできる芸当ではない。

忘れられない、忘れることができないあの音は、決して不快ではなく、むしろ心地よく、神聖で精緻な完成されたものだと思ってしまった。

機械音が聞こえた直後、ゴーグル女は一点を見つめたまま呆れたような表情をしたのを俺は見逃さなかった。


なんだ。

何を隠してやがる。

何を見やがった。

いや、そもそも。


てめぇは、一体“何”だ。


「……それを、君が知ってどうするの?」


淡々と、全ての感情を削ぎ落としたかのような声音で呟いたゴーグル女。初めて聞く奴の声に、らしくなく俺は一瞬肩を揺らした。


「誰だって、秘密にしたいことの1つや2つあるよ。それを他人に露見する時は、不可抗力か、自分がどうしようもなくなった時だと思ってる」

「…喋る気はねぇ、っつーことかよ」

「……ごめん」

「謝んじゃねぇ、胸糞わりぃ」


なんとなくそう返されるとは思ってはいた。が、クソゴーグルに謝られた挙句に気を遣われる方が気に入らねぇ。
つか、隠すんなら中途半端にすんなや。
そう吐き捨てるとゴーグル女は困ったように笑った。


「うん…ごめんね、爆豪くん」


だから、謝んじゃねぇっつってんだろ。






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