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「わーたーしーがー!!普通にドアから来たッ!!!」


午前中は普通科のように必修科目の授業だったけれど、午後はヒーロー科ならではの授業が待っていた。
あのオールマイトが雄英の教室として赴任して初めての授業は、ヒーロー基礎学。どういう内容なのか想像もつかない授業はドキドキとわくわくが絶えない。

そして、相変わらず画風が違うオールマイトは、初授業ということもあってなんだかるんるんしながら今日室に入ってきた。少女か…


「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作るための様々な訓練を行う科目だ!」


なるほど、てことはヒーローに必要な事を学ぶってことでいいのかな…?救助とか、敵と戦う模擬訓練みたいなのとか…?


「さっそくだが、今日はこれ!!戦闘訓練!」


“BATTOLE”と書かれたカードを掲げるオールマイト。その言葉に戦慄く人、楽しみにする人、雰囲気が露骨にわかるのが面白いよね。あ、ちなみに私は前者です。


「そしてそいつに伴って…こちら!入学前に送ってもらった“個性届け”と“要望”に沿ってあつらえた、戦闘服!!」

「おおおお!!」

「急にヒーローっぽくなった…!!」


壁から自動で出てきたスーツケース収納スペースなんてもう今更突っ込まないぞ…!!

自分の出席番号が書かれているスーツケースを手に取った私たちは、注文したコスチュームがどんなものに仕上がっているのか胸を高鳴らせながら更衣室へと向かった。


「わ、お茶子ちゃんのかわいいね!宇宙服みたい!」

「ぱつぱつだから、ちょっと恥ずかしいや…」

「まぁ…気にはなるよね」


照れるお茶子ちゃんもかわいい。女子ってなんでこうかわいいんだろう。梅雨ちゃんの蛙がモチーフになってるウェットスーツも、響香ちゃんのパンクっぽいのも、三奈ちゃんのおしゃれなスーツもかっこいいや。センスが光りまくってんな、制作会社…

そして、一番強烈なのが百ちゃんであった。

大胆に胸元ががばーッと開いたレオタードに惜しみもなく晒されている長い脚がやばい。なにがやばいって…


「発育の暴力…」

「それな」


みんなスタイルよすぎな。ぱつぱつ着れるだけの体型してるだけマシだよ、素敵だよ。


「玲央ちゃんはスウェットみたいね」

「えへ、実はそう…。動きやすさ重視したくてさ」


私は全体的にダボッとしてる。白と紺の胸元に切り返しがある長袖に紺のショートパンツ。ニーハイ。ブーツ。膝のサポーター。腰のポーチ。そして愛用のゴーグル。以上。

シンプルに極めたぜ。


「でもなんだかかわいいね!」

「そう言ってもらえるとありがた…透ちゃん?」

「ん?」

「コスチューム…それだけ?」

「そだよ?」


ぷかぷかと目の前で浮遊する手袋とブーツ。思い返してみると、制服を着ていた時は制服が浮いていたから、てことは今は…


「(ブーツと手袋以外裸…!?)」


透明人間ならではと言えばいいのか、あえて突っ込まずにいればいいのか………これは、私の突っ込みレベルを試されている、のか…?


「そーなんだぁ、透ちゃんの個性がすっごい活かされるね!」

「でしょでしょ!!」


当たり障りなく褒めた私であった。いや、難易度高すぎね。





着替え終わった私たちは指定されたグラウンドβに足を踏み入れる。
入試の時に使った街の演習場みたいなところだなぁ…。戦闘訓練は入試みたいにギミックを使っての戦闘訓練なんだろうか。

…というより、男子勢のコスチュームが奇抜すぎてやばいわ。爆豪くんとか歩く手榴弾じゃん…!触れるだけで殺されそう…しかもなんか仮面ライダーみたいなのもいる!あれは誰だ…。あ、上鳴くんのコスチュームわたしと似てる!なんか一気に親近感がわいたんだけど!
いずは…フードの触角と言いマスクのデザインと言い、オールマイトの要素てんこ盛りじゃん。わっかりやすいなぁ。


「パツパツにレオタードにニーハイって!!!ヒーロー科サイコーかよ!!」

「えぇッ!?」


あ、峰田くんってそういうキャラなんだ。


「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」


あの仮面ライダー飯田くんだったのか!!クソかっこいいな!!


「いいや!もう2歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!」


曰く、敵退治は主に屋外で見られるけれど、統計で言えば屋内の方が凶悪的出現率は高いのだそう。
確かに、銀行強盗とか立て籠もりとか裏商売とか、基本屋内だよね。迂闊に屋内に踏み込んじゃいけないから、建物の構造や自分の個性で作戦を考えないといけないし、今回の実践訓練はかなり勉強になるんじゃないだろうか。


「君らにはこれから“敵組”と“ヒーロー組”に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!」

「基礎訓練もなしに?」

「その基礎を知るための実践さ!ただし今度はぶっ壊せばオッケーなロボ相手じゃないのがミソだ」


この実戦での状況設定としては、敵がアジトに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとしているのだそう。ヒーローは制限時間内に敵を捕まえるか、核兵器を回収するかのどちらか。対して敵は制限時間までに核兵器を守りきるか、ヒーローを捕まえることが条件。
設定がアメリカン過ぎてあれだけど、変に凝った設定よりわかりやすくて助かる。


「コンビ及び対戦相手はくじだ!」

「適当なのですか!?」

「…あれ。あの、ちょっといいですか?」

「何かな、時見少女?」

「このクラスは21人ですよ?2人組のチーム分けだとどこかのチームだけ3人になっちゃいますけど…」

「いい質問だ!その通り、くじによっては3人になるところがある。よって、そのチームにはハンデをつけさせてもらう!先に入った2人から5分後に残りの1人が参加。これでどうだ!」


そうしてオールマイトが用意したらしいくじによってペアが決められる。誰と組みたいとかはないけど、爆豪くんとだけはちょっと…
私がくじを引く番が回ってきて、箱に手を突っ込む。掴んだ紙切れを広げると白紙だった。え?


「どういうことだってばよ…」

「よーっし、全員くじ引いたな?そうしたら誰か1人白紙の紙を引いた人がいるはずだ!挙手!」

「あい…」

「時見少女だったか!なぁに、白紙だからって落ち込むことはない!悪いがもう一回くじを引いてくれるか?」


オールマイトに言われるがままにもう一度箱に手を入れる。適当に掴んだ紙に書いていたのは“I”の文字。ってことは…


「わー!玲央ちゃんと一緒のチームだー!よろしくね!」

「透ちゃん!と、尾白、くん…だったっけ」

「うん。よろしくね時見さん」

「こちらこそよろしく!」

「さぁて、続いて対戦相手の発表だ!最初の対戦相手は、こいつらだ!」


ばばーん!と掲げられたのは“A”と“D”と書かれたボール。ってことは…


「いずと、爆豪くん…」


なんつー因縁対決なんだ…この対戦、かなり荒れるかもしれない…!
初戦のチーム以外はモニタールームで観察するらしく、いったんこの場からは離脱することになった。


「いず…」

「玲央、ちゃん…」


話しかけるといずは緊張でがちがちになっていた。今にも死んでしまいそうだよ…!


「…私、見てるだけしかできないけど頑張ってね…!モニタールームでいずの応援してるから…!」

「…うん、頑張るよ」


そうして別れた私たち。モニタールームでは、他チームの観察をしながら作戦を考えている。他のチームの観戦をすることによって思わぬ発想が生まれたりするから、目を離さないように見とかないと…!


「うおッ、いきなり奇襲かよ!」

「!」


モニターでは爆豪くんがいずに奇襲を仕掛けている映像が流れている。中学で爆豪くんといずを見ていて、なんとなく真っ先に爆豪くんが出に向かっていくような気がしていた私。どうやらいずもそう呼んでいたらしく、掠ったものの上手く避けていた。

そのあとも爆豪くんの応酬があるものの、いずの素早い動きに対応されてイラついている様子。動きを読まれて投げ飛ばされた爆豪くんはしたたかに背中を床に打ち付けた。


『いつまでも雑魚で出来損ないのデクじゃないぞ、かっちゃん!!僕は…」


あれ。


『“頑張れ!!”って感じの“デク”だッ!!』


ずぐり、となんだか心臓が痛んだ。今まで散々聞いてきたいずの蔑称。私は、そんな風にいずを呼びたくなかったからずっと名前で呼んでいたのに、蔑称だったいずのあだ名が別の意味を持った素敵なあだ名に変えられた。私じゃ変えられなかった、いずのあだ名。


「ッ…」

「玲央ちゃん、どうかしたの?」

「梅雨ちゃん…ううん、何でもないよ」


喜ばしいはずなのに、どうしてか私は素直に喜んであげることができなかった。







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