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15


入試が終わって1週間。私は四六時中緊張しっぱなしだった。てゆーか、緊張しない日はなかった。

実技試験は手応えあり。けど…筆記試験は自己採点でギリ通るか通らないかの瀬戸際だった。クソしょうもない凡ミスさえなければ首の皮一枚繋がるんだけども…!!奇跡よ!来い!!


「姉ちゃん、貧乏揺すりうざい」

「…なんでわかったの」

「振動めっちゃきてる」

「マジか」


ソファーの上で足を抱える。

…いずには聞けなかった。試験どうだったかって。会場の外で会ったいずは世紀末…むしろ世界の崩壊に面した人間の顔をしていた。迂闊にラインも送れなくて、どうしたものやらとずるずる悩んでいるうちに1週間が経っていたのだ。

あぁ、時間の流れは残酷よな…


「ただいまぁ〜」


ぼーっと対して面白くもないバラエティ番組を見ていると、玄関から間延びした声が聞こえた。あぁ、お母さん帰って来たのか。


「玲央、雄英から合否通知きてるわよ?」


ーどっしんガタガタがちゃんッ!パリーンッ!!!


「ぎゃあああ!!コップがぁああッ!!!」

「落ち着きなよ」

「え、どうする?見る?やめとく?」

「その前にコップ…!!」

「僕がやっとくから、姉ちゃんは先にあっち」


言うが早いか、翼はちょいちょいっと指を動かして個性で割れたコップを浮かせ、お母さんがそれらを回収して行った。おぅ…好プレーだな…


「玲央、早く見ておいで」

「う、うん…」


のろのろと部屋に戻り、ベッドの上に正座してその前に封筒を鎮座させる。
お、落ち着け…!落ち着くんだ時見玲央…!!これはただの紙だ、そう…!!ただのなんの変哲もない紙なんだ…!!


「アカン…!アカンアカンアカンアカン…!!震える震える震える震える…!!手がッ…!!手がぁああッ!!」


ーぴろぴろろーん


「うわぁあああ!!!」


突如鳴り響いたスマホに危うくベッドから転がり落ちるかと思った。ばくばくと鳴り響く心臓を押さえつつスマホを手に取る。どうやらラインの通知みたいで、差出人は…


「いず…?」


思いがけない人物からのラインに慌ててアプリを起動させると、いずとのトーク画面には“いきなりごめん…!どうだった?”の文字。その内容に幾分か冷静さを取り戻した私は、いずに返信する前に勢いよく合否通知の封を切った。
ぽてん、とベッドに落っこちたのは手のひらサイズの丸い円盤。…何だこれ。

恐る恐るそれを人差し指でつっつこうと手を伸ばし……た瞬間、円盤からブォンッ!と機械音が響いた。どうやらそれは投映機のようで、モニターの向こうではスーツを着た三白眼で無精髭の生えた男の人が…

…え、誰?


『えー、時見玲央。今年度のヒーロー科入試の合格を通達する』


……………………へぁ!?


『筆記はギリギリ合格ライン。実技に関しては、倒した仮想敵のポイントの他に審査制のレスキューポイントを含めてトータル71。後日、入学に必要な書類を郵送しますので、期日までに記入、返送するように。以上』


そう言い残してモニターは消えた。…てゆーか、え…!?それだけ!?いや、あまり長々言われてもだけど…!!にしても必要最低限すぎない!?


「アホみたいに実感ない…」


え…てか、合格したんだよね、私…。
嬉しい、んだけど…嬉しいよ!?嬉しいんだけどね!?素直に喜べないよね!?なんかもっとこう…!!…いえ、なんでもないです。


「…あ、いずにライン返さないと」


ぽちぽちと画面をタップして、とりあえずリビングにいるお母さんたちに通知の内容を話したら私以上に狂喜していた。

…そして数分後、いずからの電話に全力で叫んだ私はそのまま泣き崩れたのだった。






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