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05


「時見、これお前んとこのクラスのノートだから持って行ってくれね?日直だろ、お前」

「……ハイ」


今日が日直だということをすっかり忘れていた。
提出していたノートを数学担当の教師から人数分受け取った私はふらふらとおぼつかない足取りで廊下を歩いていた。クソぉ…あの教師め私が一応女子だとわかっていての狼藉か?運べないことはないけどなんにせよ重いんだよこの量!

今にもはずれそうな指をもはや根性でノートに繋ぎとめている私ってめっちゃえらいと思う。誰も言ってくれないから自分で言うよ。


「お、おも…ッ」


あっちへフラフラ、こっちへフラフラ。やっとこさ階段を上り終えてあとは目の前の角を曲がれば教室だ。
わー、ゴールが見えてきたぁー。これで奇跡的にいずが出てきてくれたら私血の涙流して喜びそう。


「わッ…!」


…だというのに、これまたどうしてこうなった。曲がり角に差し掛かった瞬間にそこから現れた人影に思いっきりぶつかってしまった。しこたまぶつけた鼻先が痛い…。いや、そんなことよりもノート…!


「…オゥ…」


なんということでしょう、あたり一面がノートの海…なんてボケをかましている場合じゃない。嘘やん…ノートが散乱してる…超つらい…


「おい」


そしてさらにもっとつらいッ!!いずよ来い!的な感じで念を送ってたのによりにもよってぶつかったのが爆豪くんとか…!詰んだ…終わった…干される…
絶望に虚空を眺めているとべしんッ、と爆豪くんに頭をはたかれた。マジか、こいつマジか…!


「てめぇ…ぶつかっといて謝罪もなしかクソゴーグル女…!」

「ヒェッ…!ごごごごめんなさい爆豪くんッ!前をよく見てなかったもんで…!」

「どもるんじゃねぇクソがッ!死ねッ!」

「死ね…」


同級生に死亡を促されたんだけどへこむ…。俯くと足元に散らばるノートたちが目に入る。あ、忘れてた。
せっせと私がぶちまけてしまったノートたちを掻き集め、人数分あるか数える。ひぃ、ふぅ、みぃ……おっし、大丈夫だった。
よっこいせ。凶器レベルに重たいノートを再び腕に抱えなおして教室に向かおうとすると、私の前になぜか爆豪くんが立ち塞がった。何…?なんなの君…?はッ…!も、もしかして巷で噂の「ブツカッタジャネーカ、イテーダロ!イシャリョウヨコセ!」的なあれ!?やだやだそんなお金ないよ助けてオールマイト!


「それ、クラスのやつなんか」


目の前の爆豪くんをどう回避しようか足りない脳みそをフル回転させていたのだけれど、彼から発せられたのは予想外の言葉だった。


「えッ!?えと、うん…私今日日直だったから先生に頼まれちゃって…」

「そーかよ」


そう言って爆豪くんは、私の腕から半分以上のノートを掻っ攫っていき…って、エッ!?


「ば、爆豪くん…!?いいよ無理してくても!日直だから私が…!」

「勘違いすんなクソゴーグル!てめぇに廊下をフラフラされっとクソ邪魔なんだよ!それとももういっぺんノートぶちまけてそこに沈めてやろうか、あ゛ぁ!?」

「ワァーイ、モッテクレテ玲央チャントッテモウレシー」

「ざっけんな誰がカタコトでしゃべれっつった死ね!」


本当に口が悪いな君はッ!?さすがに傷つくぜ、全く…
…とはいえ、ノートを半分以上も持ってもらってとても助かっている。いつもいずをいじめているのと、くっそ口悪いイメージしかなかったから、なんていうか…こうやって暴言吐きながらも教室までちゃんとノートを運ぶの手伝ってくれて以外っていうか…

爆豪くんって、素行はよろしくないけど根っこは実はいい人なんじゃ…

なんて思ったわけでして。


「爆豪くん、爆豪くん」

「あ?んだよクソゴーグル女、口動かしてねぇで足動かせや」

「手伝ってくれてありがとう」

「…」


…あり、なんかフリーズしたんだけど。
「爆豪くん…?」顔を覗き込むと耳を真っ赤にした爆豪くんが…って、


「えッ…!?」

「見んじゃねーよクソがッ!殺すぞ!!」

「殺さないで!ってか、爆豪くん待って何今の顔!」

「黙れッ!!」


もしかして彼はお礼とか言われ慣れてないんじゃ…?え、何それかわいい!なんか俄然爆豪くんに親近感がわいたんだけど!
にやにやしながらもう一度顔を覗き込むと、今度は膝裏に彼の足の甲が直撃し、私が崩れ落ちるのはもうすぐのこと。







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