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(ジャーファルside)


「ぼ、僕と付き合ってくださいッ…!」


なんということだ。
ただ中庭を歩いていただけというのに人の、しかも最近入った新しい部下の一斉一代の告白に遭遇するだなんてついてない。
私ははぁ、と溜め息をつき、元来た道を引き返そうとくるりと踵を返した。


「いいですよ」


いや、返そうとした。今の声…もしや、

悪いと思いつつも一度気になれば人間見たくなるもの。結論。めっちゃ見たいです。気になりますはいなにか問題でも。
こっそりと様子を窺う。そして声の主を見て軽く絶望感を抱いた。ああ、なんてこった。


「ほ、本当ですかッ!?」


彼女こと李青珱。いや別に彼女が悪いとか、そういうのではないんです。ただ問題なのは彼女の兄である青舜君の方ですかね。
青舜君は何かと青珱と一緒にいるし、何より彼は重度のシスコンであった。
時たま私の方を向いてドヤ顔なんてしてくるんですよどう思います?
いやまあ確かに青珱は顔立ちは可愛いらしいと思いますよ?性格だっていいし少しドジなところもくるものがありますし。ちょこちょこと私の後ろを着いてきたり、悲しいことにたまに青舜君の言う「青珱天使ッ!!!」がよくわかる時もあります。

しかし彼女に手を出そうものならば彼はいっそセコムの如くやってくる。守護神だ。悪い意味の。そう思うと彼はよく告白だなんてこぎつけましたね。そこは純粋に尊敬しますよ。


「はい!」


そしてこの後の展開も大体読めたんですがね。


「それで、どこに付き合えばいいのですか?」
「…………………えッ?」


やっぱりなッ!!!だろうと思ったぞ私はッッ!!!!
文官は青珱の衝撃的な言葉に石化した。いっそオブジェです。


「何か必要なものがあるんですよね?あ、もしお忙しいようであれば私が買ってきますよ!」


ああ違うんだ青珱。彼はあなたにそういうことを伝えたいんじゃないんだ。
しかもあれでわざとではないのだから尚更たちが悪い。その証拠に石化した彼を不思議そうに見ている。本当なんてこったい。見ているこっちが胸が痛い。


「……………………」


ピクリとも動かなくなってしまった彼に同情した。
ああ青舜君、あなたは青珱に一体どんな教育をしたのですか心底気になります。


「……あ、ああ…はい、実はそうなんです…はは…いえ大丈夫ですよ。ちゃんと自分で取りに行きます…はは…」
「?そうですか?では私、まだやることがあるので失礼します」


そう言って青珱はその場を立ち去り、残ったのは哀愁ただよう勇気ある文官のすすり泣く声であった。

そして私も、静かにこの場を去ったのだった。


まだあなたには希望があります。めげずに頑張りなさい。くれぐれもシンのようにはならない程度に。





後日聞いた話によると、あの場に居合わせたのはどうやら私だけではなかったらしい。

青舜君、あなたいつか青珱に愛想つかされても知りませんからね。





ーーーーー

ていう小話

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