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(青舜side)



「わぁ…!兄さん、海がキラキラしてます!」


甲板から身を乗り出す青珱は私と同じ青い目をキラキラとさせながらシンドリアへと続く海を見つめていた。うん、我が妹は今日も可愛い。くそ可愛い。


「あ、兄さん!さっき跳ねた大きな魚はなんと言うのですか?」
「あれは“イルカ”というものらしいよ。イルカは魚じゃなくて私たちと同じ哺乳類なんだって」
「ほえぇ…!」


あ、また跳ねた!と嬉しそうにする青珱に私は色々ノックアウト寸前である。おっといけない鼻血が。
煌帝国からの研修生は私たち兄妹を含めて総勢15名。女性も何人かいるが恐らくその中でも青珱は最年少で、ほとんどが私と同い年か、それより上かだ。まあ私たちはある意味特例なんだろうけど。


「とってもあったかいですね、兄さん」
「うん、そうだね」


ふにゃりとこっちを見て笑う青珱に今度こそ鼻血が出た。


「兄さん!?」
「おっといけない詰め物詰め物…」





*****


「ようこそ、煌帝国御一行。この度はどうぞゆっくりしていってくれ」


シンドリアに着いて迎えられたのはかの有名なシンドバッド王と替えが率いる八人将の面々だった。彼らは快く私たち研修生を迎え入れてくれ、これから五日間過ごすであろう宿舎に案内してくれた。割と王宮に近いところにある。


「わっ」
「っと…大丈夫ですか?」


宿舎へ一歩入ろうとしたとき、何もないはずのそこで青珱が可愛らしく蹴っ躓き体勢を崩した。支えようと手を伸ばすも、それよりも早く八人将の一人であるクーフィーヤの男性が青珱を受け止めた。ちょ、それ私の役目…


「は、はいぃ…!すみませんすみません!お手数をおかけしてすみませんんんんん!!」


ばびゅん!と効果音でも付きそうなくらいの速さで青珱は私の背中に隠れた。周り(主に煌帝国の面々)は苦笑いし、クーフィーヤの男性はおろおろと慌てだした。


「えッあ、あの、私何かしましたか…?」
「いえ、大丈夫です。妹は少し人見知りで」
「そ、そうですか…(なんで嬉しそうなんだろうこの人)」


副声が聞こえた気もしなくはなかったが、とりあえず青珱が可愛いので背中で様子をうかがう妹の姿をしかと脳みそに焼き付けておいた。いやぁ、眼福眼福。


そんなこんなで与えられた部屋へと移動する際、今後の予定を脳内で思い返す。今日は夕方から私たち煌帝国の研修生の歓迎会をしてくれるらしい。それまでは各自自由行動。そして今回の研修内容は文化について。国をもっとよくしていくためには他国の文化を知る必要がある。なのでいくつかの班に分かれてシンドリアを見学、実習していくというものだ。
私?もちろん青珱と同じ班ですけど?というか他の人たちが気を遣ってか勝手に同じ班にしてくれた。私の青珱好きは周知の事実ですけどなにか。


「兄さん、町に行こうと思うんだけれど、一緒に行きませんか?」
「あ、うん、これ片付けたら行くから少し待っててくれる?」
「うん」


ちなみに青珱とはなぜか同じ部屋である。いや、さすがにこれはまずいと思ったんだけれど、どうしても部屋が足りなくて(クーフィーヤの方、もといジャーファル殿が申し訳なさそうに言っていた)兄妹ということで私たち二人が相部屋となったのだ。まあ男10人女5人だったらそうなるか。
余談だが男の方は一人ソファーで寝るらしい。


「青珱、行こうか」
「うん!」


天使のような笑顔を向ける青珱の手を取り歩く。シンドリアの町はとても賑やかで、市場に出ている食べ物などはどれも新鮮でおいしそうだ。
何より国民みんなが笑顔で、一代でここまで国を繁栄させたシンドバッド王にはとても尊敬した。


「嬢ちゃんたち、手なんて繋いで仲がいいねぇ!」


あれよこれよと目移りする青珱を微笑ましく見つめていると、市場のテントから恰幅のいい男性が声をかけてきた。


「兄妹かい?」
「はい。とても可愛い妹です」
「に、兄さん…!」


いや、嘘は言ってないぞ青珱!!お兄ちゃんはいつだって大真面目だ!!
頬を真っ赤に染める青珱にだらしなく口元が弛む。ほんとうちの天使超可愛い。


「おうおう!なんだか妬けるねぇ!そんな可愛い兄妹にこれやるよ!お前さんたち煌帝国の研修生だろう?よかったら宿舎で食べとくれ」
「え、い、いいんですか?」
「構わねえよ!ほら、持ってった持ってった!!」


そう言って私たちに持たせのは瑞々しい果物だった。これが俗に言う南国果実というやつか。


「あ、ありがとうございます!」
「いいって!いつまでも仲良くな!」
「「はい!」」


青珱と思わず顔を見合わせて、どちらかともなくお互いに笑い合った。
うん、こんな日も全然ありだと思う。





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シンドリアと煌帝国はいがみ合ってませんっていう捏造




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