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※ほんの少し注意




研修最終日。今日は皇子の言ってたとおり一日シンドリアを観光するみたいだ。王宮から海岸までゆっくりと見て回り、後は自由行動。

…というわけにはいかなかった。
海岸から回れ右をした瞬間に彼らは現れた。そう、所謂巨大な…


「南海生物だー!!!」


そう、それ。謝肉宴の幕開けとなる南海生物狩り。謝肉宴とは年に数回、島へ襲来した南海生物を仕留めてその肉をふるまう収穫祭らしい。国を挙げての盛大なお祭り。皇子が嬉々として話していたのをよく覚えている。
そして、それに立ち会えるなど夢にも思っていなかった。


「兄さん!!なんか大きいのが来ましたよ!?」
「ええええええ!?」
「ちょ、そこの二人!!危ないから下がって!!」


市場のお姉さんに首根っこを引かれ安全地帯だろうと思われる場所に入る。お、お手数おかけします…!!

そして、盛大な笛の音と主に現れたシンドバッド王と八人将たち。あ、今ヤムライハ殿が手を振ってくれましたよ!

遠目からでもシンドバッド王が何か指示を出しているのがわかる。次の瞬間にはジャーファル殿とシャルルカン殿が果敢にも南海生物なるものに飛び掛かって行った。ええええええええええええ!!?


「だ、大丈夫なんでしょうか…」
「…きっと大丈夫だよ。なんたってあの八人将なんだから」


兄さんと事の成り行きを見つめる。ジャーファル殿が金属の付いた紐で南海生物を縛り上げ、身動きが取れなくなったところをシャルルカン殿が一気に削ぐ。頭、腸、尻尾…
実に三枚おろし後の細切り。何とも手際のいい。


「さ、三枚におろしちゃった…!」
「…もう何も言わない、何も言わないぞ…!」


戦慄く煌帝国陣に対し浮き足立つシンドリアの人々。そっか。ここの人たちにとってはパフォーマンスの一部だった。
ハッ、こ、これが所謂カルチャーショックというやつなのでは…!皇子!私今カルチャーショックとやらを受けています!!


「みんな!仲良く分けてくれよな!!」


大きな布の上に落とされた南海生物(あれはアバレウツボ、というらしい)は町の人たちによって運ばれていく。町の人全員で調理して、謝肉宴の準備。なんて素敵なんでしょうか。


「兄さん!謝肉宴ですよ!!」
「まさか私たちが参加できるとは思ってもみなかった…運がよかったんだよきっと!」


うふふ、と笑いあう私たちは端から見たら何とも微笑ましかったらしい(後日彗殿が語った)。




*****

(青舜side)


「あ。あの…!本当にこれを着るんですか…!?」
「当たり前でしょ?そういう決まりなんだからさっさと着な!」
「こ、こんなに布が少ないものを…!?で、でも汐殿は着てな…」
「あたしはいいの!!ほら!さっさと脱ぐ!!」
「ひゃああああああああああああ!!」


………中で一体何がッ…!!!
私と青珱で部屋でまったり寛いでいたのが数分前。突然何の前触れもなく汐が不法侵入し私を部屋の外へ蹴り飛ばしたのが今さっき。
思わず扉に聞き耳を立てているのは私ですはい挙手。


「せ、せきど…ひゃああああ!!」
「おら!!暴れるんじゃないよ!!大人しくしてな!!」
「あッ、ちょ…いやあああああああああああああ」




「はぁ…はぁ…」
「せ、青舜殿…?」
「ハッ」


いけない、また鼻血が…
声をかけてきたのは彗で、鼻血を垂らしながら扉に耳をくっつける私を見てドン引きしたように見つめていた。心底失礼な奴である。それより詰め物は一体どこに。


「な、何やってるんすか…」
「青珱がこの扉一枚を挟んだ向こうで脱がされているだなんて想像するとたまんなくてッ!!」
「あんた実の妹に何て不純な妄想ぶつけてんだよ!!チクリますよ!チクリますからね白瑛様にッ!!!」
「それはやめたげてえええええええええええ!!!!」


そんなことを姫様に言いつけられたらその翌日の朝日は絶対に拝むことはできないだろう。無理、死亡フラグ、ダメ、絶対。


「…そこまで言いますか」
「言います。言っちゃいます。姫様怖い。超怖い」


ああ、思い出しただけでも体中が笑いだしそう!!うふ、うふふ、うふふふふhっふふふふふ


「そんなにトラウマなんですか!?」
「やめて!!これ以上人の傷を抉って何が楽しいのッ!!!?」
「キャラぶっ飛んでんですよッ!!!」

「うっさい!!近所迷惑だアホ!!」


バーンッと扉を蹴破って出てきたのは汐で、あれおかしいなその扉内開きのはず…


「青珱、いい加減諦めなって」
「ううぅ…ひ、ひどいよ汐殿ぉ…!恥ずかしいよぉ…!」
「ええいグチグチと面倒くさい!!そぉれ!!」
「ひゃああああああああああああ!!!」
「うわああああああああああああああ!!」


汐がこちらにポーイッと放り投げた白いものを咄嗟に受け取り、それとともに床に倒れこんだ。
ちょ、汐ッ人に向かって何かを放り投げてはいけませんッ!!!

文句を言ってやろうと上半身を起こすと、不意に柔らかいものが体に当たり全意識を持って行かれ、私の上に乗るものを見た。


「ッ!!!!!!!!!?」
「うぅぅ……」


て!!!ん!!!し!!!!!
ふおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!

なんということか青珱は謝肉宴で女性は必ず着なければいけないという例の白い衣装を着ていた。
ちょッ!!目の!!目のやり場に困るんだがッッッ!!!!!
こんなに露出が多いだなんて聞いてないんだがッッッ!!!!
青珱って意外と着やせしてたんだねッ!!!胸が当たってるよッッッ!!!!!!
マジかッッッッッ!!!!!!


「ぶふぉおッッッッ!!!!」
「いやああああああああ兄さああああああああああああん!!!?」


号泣しながら私の体を揺する青珱を今一度見やる。………うん、超可愛い。天使だ。


「我が人生に悔いなしッ…!」
「青舜殿おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


あんたがそんなに変態だとは思わなかったよッッ!!!
だなんて彗の叫びは知らない聞こえないおやすみなさい。





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後汐に蹴り飛ばされて目が覚める青舜であった。




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