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▼ 14:友達妖怪



部屋でなんとなく妖怪大辞典を開くと、後ろで妖怪パッドを磨いていたウィスパーとベッドで丸くなっていたコマさんがひょっこりと覗き込んできた。ちなみにジバニャンはニャーKBのライブに行ったよ。


「妖怪メダルもずいぶん集まりましたねぇ」

「うん。いつの間にかこんなに、ね…」


なんだかんだ出会いは多かった気がする。そのほとんどがあまりいい思い出ではなかったのだけれど、最後にはなんだかんだ仲良くなってメダルをもらったなぁ。


「あ、オラのメダルもあるズラ!」

「ちゃんとしまってあるよ」


改めてこうやって見てみると、いろんな妖怪と出会ってたんだなぁってなんだか懐かしくなった。


「EランクからCランクの妖怪は大体集まったようですね。私的にはそろそろBランク以上の妖怪友達がいた方が嬉しいんですけどね」

「何言ってんの、ヤマトがいるじゃん」


ウィスパーってばひどいこと言うよねー。
隣でコマさんと戯れているカブトムシ版のヤマトに言うと、ヤマトは怒ったようにブンブン、とツノを振った。そんなヤマトにウィスパーは慌てて弁解する。


「ち、違いますって違いますー!!ヤマトは大体がカブトムシの姿でいるじゃありませんか、なんだかSランク妖怪の実感がないんですよね」

「別にいいじゃん。そんなランクにこだわらなくてもみんな強いよ?今まで通りちちょっとずつ友達増やして行こうよ」

「うーん…」


なによ、その納得してなさげな声は…こっちが釈然としないんだけど。辞典をウィスパーに返してDSを片手にベッドに寝転ぶと、よじよじとコマさんがベッドに登ってきてゲームの画面を覗き込んできた。頭にヤマトがくっ付いててかわいい。


「ケイはよくゲームするズラ?」

「まぁね。クマくんやカンチくんたちに感化されちゃってね、お母さんに誕生日の時に買ってもらったんだ」

「そうだったズラか」

「あああああああああああああああああッ!!!」

「「「!!??」」」


え、なに!?いきなり叫ぶとかなんなの!?


「ちょっとウィスパーうるさい!!」


振りかえるとウィスパーが妖怪大辞典をガン見しながらフルフルとふるえていた。……バイブレーション?


「もんげー!!なんズラなんズラ!?」

「こここ、これ、は…これはぁああ…!!!どーゆーことですかケイちゃんんんんん!!!」

「うわッ!な、何よ!」

「これ!!これを見てくださいでうぃす!!」


ずずい!と辞典を突きつけてきたウィスパーは鬼気迫る顔だ。てゆーか近いんだけど。今にも顔面に当たりそうな辞典を押しのけてページを見る。


「…このページがどうかしたの?」

「どうかしたの?じゃありまっせーん!!ここ!!これ!!八百比丘尼先輩のメダルじゃありませんか!!いつどこでどのタイミングでぇえええええ!!!」

「お、落ち着いてよ!!そんなに迫ってこないで!!!」


なにかと思えば八百比丘尼さんのことだったらしい。八百比丘尼さんとはこの前海に遊びに行ったときに友達になったんだよ。そういうとウィスパーは信じられない!と言うように打ちひしがれた。
……え?ほ、本当にどうしたの?てゆーか…


「先輩って何」

「や、八百比丘尼先輩は古典妖怪の中の古典妖怪でございますぅ…全人魚の憧れの的と言っても過言ではないくらいの、とてもすごい妖怪なんですぅううう!!!」

「へぇ、そうだったんだ」


八百比丘尼さんのメダルをまじまじと見つめる。そう言えば、八百比丘尼(やおびくに)って”はっぴゃくびくに”とも言われていて、長寿伝説でも有名だよね。人魚の肉を食べて800歳まで生きたとされ、肌が娘のように白く白比丘尼(しらびくに)とも呼ばれているって聞いたことがある。地域によって諸説はあるけれど。

…そう考えると、八百比丘尼さんってすごい妖怪なんだね。


「しかも彼女はSランク妖怪!!やりましたねケイちゃん!」


さっきとは打って変わって上機嫌になったウィスパーに冷たい目を向けつつ八百比丘尼さんのメダルを辞典にしまう。まぁなんにせよ、友達が増えるのは嬉しいからね。いつかオロチくん似のあの子とも友達になれたらいいなぁ。


「ね、コマさん」

「ズラ?」


きょとん、と口の端にチョコレートを付けたコマさんが私を見上げてきて、あまりにかわいいから思わず抱きしめてしまった。






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