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▼ 13:しんぴのウロコ

「ケイー!何してるの、早く来なさい!」


はぁーい。と私を呼ぶお母さんに返事をして砂浜を歩いていると、前を歩いていたフミちゃんが私の隣に並んだ。


「どうしたのケイちゃん?なんだか元気ないね」

「んー?そんなことないよ。大丈夫大丈夫」

「本当…?」

「うん」


ほら見てよ。訝しげに私を見るフミちゃんに向かってにぃーっと笑ってみせると、ようやくフミちゃんも笑顔になった。フミちゃんは笑顔の方が可愛いよ。そう言うとフミちゃんは「もう!」と顔を真っ赤にさせてそっぽ向いた。そう言うところが男子に人気がある理由なのかもね。

先日さくら中央シティの工事現場にて、友達妖怪のみんなと一緒に何とかおぼろ入道を倒すことができたんだけれど、どうにも腑に落ちない。なぜならその後に登場したキュウビの言葉に引っかかりを覚えるからだ。
フラワーロードのボヤ騒ぎはやっぱりキュウビじゃなかった。けれどその後の別の妖怪って言うところが気になる。いたずらは妖怪の専売特許なのはわかっているのだけれど、それにしてはあのボヤ騒ぎはやりすぎだ。
一体何のためにあんなことをしたのか。…妖怪の考えることはわからないよ。


「真実に辿りつくまで、か…」


どういうことなんだろう。


「木霊さんそっち持ってください!」

「はい!」


私のお父さんとフミちゃんのお父さんの手によって広げられた日差し避けの簡易テント。話は変わって、今は私の家族とフミちゃんの家族でさざなみ海浜公園の海に遊びに来ている。なんでもお父さんとフミちゃんパパの休みが偶然重なったみたいで、せっかくだしみんなで海に行こう!って話になったらしい。父親ズが。テントの下でせっせと浮き輪を膨らませてくれているお母さんを手伝いつつ、空を仰ぐ。


…見事に快晴である。


「晴れてよかったですねー」

「本当、海なんて久しぶりですから」

「私も」


今回はさすがにヤマトもウィスパーも、工事現場の件からうちに居候し始めてコマさんもジバニャンもみんな家にお留守番である。太陽に反射する海を見てキラキラと目を輝かせたフミちゃんは、浮き輪を片手に私の手を引いて走った。


「行こ、ケイちゃん!」

「あ、危ないよ走ったら!砂に足とられて転んじゃう!」

「大丈夫よ!ケイちゃんってば心配性だね!」

「フミちゃんは楽しそうだね」

「当たり前じゃない!だって海だよ!?ほらケイちゃん、浮き輪に入って入って!」

「わわ!待って待って!」


それー!と私に浮き輪を装着させたフミちゃんは、浮き輪に掴まってバシャバシャとバタ足させた。時々海水をかけてくるから、私も仕返しにとかけ返した。

ずっと泳いでたり、潜って魚の観察をしたり、水のかけ合いをしたり、フミちゃんパパが持ってきたビーチボールで定番のバレーボールをしたり。あぁ、大人組が柄にもなく熱くなってた気がする。フミちゃん苦笑いしてたよ。

ぶっ通しで遊び続けたからか、砂浜に上がることには私もフミちゃんも疲れ切っていた。


「はぁーッ、楽しかったぁ!」

「こんなに夢中になって遊ぶのって久しぶりかも」

「えー、そうなの?」

「だって学校の行事ってあんまり楽しくないから。こうやってフミちゃんや友達と時間を忘れて遊んでる方がずっと楽しい!」

「ふふ、私もだよ!」

「随分遊んでたわねー。お腹すいたでしょ?お弁当にしましょ!」

「今日に備えて、ケイちゃんのお母さんと一緒に準備したのよ」

「へぇ、楽しみ!」


簡易テントの下に広げられた重箱にみんなして目を輝かせた。か、から揚げがこんなに…!!
今にも垂れ流れそうな涎を引っ込める私をフミちゃんがくすりと笑った。女の子はこうやって笑うらしい。
みんなでいただきます、と手を合わせお母さんとフミちゃんママが作ってくれたお弁当を頬張る。うわ、おいしい!お母さんのから揚げもおいしいけど、フミちゃんママの出汁巻も絶品だね。


「あら、大変!」

「んっぐ……ど、どうしたんだい母さん!」

「水筒を持ってくるの忘れちゃったみたい…おかしいなぁ、来る前にちゃんと確認したのに…」

「私買ってくるよ。お茶でいいよね?」

「お父さんもついて行くぞ?」

「大丈夫だよ。ヨロズマートだって近いんだし、ちゃっと行ってちゃっと帰って来るよ」

「じゃあ私がついて行くよ」

「いいって!んじゃ、行ってくるね」


お茶代をお母さんから預かり、水着の上にパーカーと短パンを着て砂浜を出た。オ・シャレンヌを通り過ぎ、ヨロズマートで大きいサイズのお茶のペットボトルを2本買う。結構重いなぁ。でもぬるくなる前に戻らないと。

道中ちょっかいを駆けてきた妖怪がいたけど、まぁそいつらは問答無用で成敗したよ。ウィスパーお手製のハリセンで。


「……ん?」


海浜公園に寸前、どこからともなく歌が聞こえた気がした。


「あっち、かな」


どうやら私にしか聞こえていないらしい歌は、海浜公園のしおかぜトンネル側から聞こえてくるみたい。…行ってみようかな。こんなにきれいな歌なら、もっと近くで聞いてみたいから。


「この辺なはずなんだけど……あ、」


思わず隠れてしまった。歌っている人物が予想外過ぎて…いや、海で歌うとなればある程度想像できたのかもしれないけど、想像を超越しすぎて戸惑ってるって言うか…うん。
こそっと岩陰から顔を半分のぞかせる。岩に腰かけて、金色の尾びれが輝くそれは人魚だった。あの女子なら一度は憧れた人魚さんが目の前にいる。すごい、本物だ…!


「………さっきからそこにいるの、わかってるんだけど」

「(え、バレてる)」

「コソコソしてないで出てきなさいよ。感じ悪いわよ」


感じ悪いって…まぁ確かにそうか…
恐る恐る顔を出すと、人魚さんがこっちを向いて笑っていた。め、女神の微笑みだぁ……


「ちょ、どうしたの!?なんで泣いてるのよ!!」

「いえ、感動したって言うか…あなたのあまりに素敵な笑みに心が洗われたと言うか…」

「はぁ?変なこと言うのねぇ」


おかしそうにクスクスと笑う人魚さんになんだか照れくさくなった。自分で言っといてなんだけどなんだよ心が洗われるって。まぁあながち間違っちゃいないけどさ。


「見える子なんて久しぶりだわ。こんなところに来てどうしたの?」

「…歌が聞こえて、きれいだったので、近くで聞いてみたいなって思って」

「あら、可愛いこと言うのねぇ」


不意に人魚さんがポンッと消えた。と思ったら私の隣に現れた。びっくりして尻餅ついたんだけど。


「大丈夫?」

「はぁ…」

「ねぇ、あなた名前は?」

「ケイです。天野ケイ」

「素敵な名前ね。私は八百比丘尼よ」

「人魚さんじゃないんですか?」

「うーん、種族的には間違ってはいないのだけど、人魚は私の進化前の姿よ」

「進化…」


え、妖怪って進化するの?ポ○モンじゃん。なんて思ったけど言わない。人魚さん、改め八百比丘尼さんはふんわりと笑うと、私の両手を手(ひれ…?)で包みこんだ。八百比丘尼さんの手はひんやりとして、とても気持ちがいい。


「私、あなたのことが気に入ったわ!」

「へ、」

「お友達になりましょ!」

「え」

「なぁに、嫌なの?」

「いえ、そういうわけではなく…」


ただ、どこに気に入られる要素があったのか疑問に思いまして…
そういうと八尾比丘尼さんはきょとん、と目を瞬かせた後、今度こそけらけらと声を立てて笑った。それでも八百比丘尼さんは輝いていた。じょ、女子力よ…


「ふふ、おかしなことを言うのねぇ。そう言うのは、その人次第なのよ」

「そういうもんなのかなぁ」

「じゃあ聞くけど、ケイがもし好きな人ができたとして、友達にどうして好きになったの?って聞かれたら、どうする?」

「…好きになったからって答えると思う」

「つまりそういうこと」


うーん、なんか釈然としない…そもそも質問がね…まぁいっか。


「というわけで、よろしくねケイ」

「うん、よろしくお願いします。八百比丘尼さん」


彼女から妖怪メダルを受け取って、そう言えばと手に持っているお茶たちの存在を思い出して慌ててお母さんたちのところに戻った。案の定お茶はぬるくなってるし、お母さんたちにもすごく心配をかけたみたいでめっちゃ謝った私だった。





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原作とだいぶ違いますが、これから先ずっとこんな感じです。今更ですが。





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