クラスペディア1 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


▼ 9:同じ人



新しく友達になったバクのおかげで夜に行動できるようになったんだけれど、鬼時間なるものに巻き込まれてしまった。その際にまたオロチくんに助けてもらったから、今度こそちゃんとお礼を言うことができた。


「先生、鍵ありがとう」

「おー。忘れ物は見つかったか?」

「はい、なんとか」

「早いうちに気付いてよかったなぁー!もうちょっと遅かったら、先生たちの休みで学校が閉まってたぞ?」

「はは……じゃあ、私はこれで」

「熱中症に気を付けろよー!」


失礼しました、っと職員室を後にする。先生には私の忘れ物が宿題だって言うことは言ってない。私のクラス、5年2組の担任は変に熱血だから、もし忘れ物が宿題だとバレようものなら雷が落ちることは目に見えている。なので、悟られないようさっさとここから退散しよう。


「よかったですね、ケイちゃん。宿題取りに行けて」

「うん。これでようやく宿題ができるよ」


なんだかんだあって取りにも行けなかったし、お母さんから頼まれたお使いを終わらせたらちゃっちゃと終わらせてしまおう。


「えっと、フラワーロードの八百丸さんでじゃがいも5つと、にんじんに玉ねぎに…」

「そのメモを見る限り、今日はカレーですかねぇ」

「ぶっぶー。残念でした、今日は肉じゃがですー」

「その材料見たら誰だってカレーだと思いますって!!てゆーかケイちゃんカレー好きでしょ!?肉じゃがでいいんですかッ!?」

「意味わかんないんだけど…」


なんかウィスパーがギャーギャー言ってるけど、まぁ無視しよう。肩の定位置にいるヤマトのツノをなでながらお会計を済ませると、八百丸さんの店主さんがカットされたスイカのパックをくれた。ヤマトにどうぞって。ありがたく頂戴しましたけど。その後にお肉屋の安藤さんでバラ肉を買って、今日のお使いは完了である。


「結構かさばったなぁ」

「ふっふっふっふ…」

「え、なに」


ウィスパーがいきなり笑い出したんだけど。怖いし。背中に荒波(多分幻覚)を背負ったウィスパーは、ドンッと胸を叩きながら言った。


「ここは私めの出番ですね!ケイちゃん、荷物お持ちしますよ!」

「何言ってんの?そんなことしたら買い物袋が浮いてるように見えるじゃん。私奇人になるの嫌なんだけど」

「ご心配いりません!妖怪が持っているものは普通の人間には見えませんから!」

「…ほんとにぃ?」

「本当でうぃっす!」

「…ヤマト、本当に妖怪が持つものは見えないの?」

「疑り深い!!ひどいでうぃっすケイちゃぁああああん!!」


あーもうウィスパーうるさいよ。ちょっと黙ってて。
ヤマトを手の甲に乗せて聞くと、小さな頭をこくこくと縦に振った。そう言えばね、ヤマトの正体が妖怪だって知ってから、こうして頷いたり、時々私に話しかけてくれたりしてくれる。カブトムシのときは可愛いけど、妖怪の時はかっこいいよね、ヤマトって。


「じゃあ…お願いしてもいい?」

「任せてください!うぃっす!」


買い物袋をウィスパーに渡す。…まぁ、私からしたらいつも見えてるわけだから何ともないんだけど、本当に周りの人は何ともないのかな…
こそっと周りを見る。…ウィスパーの言うとおりだ、誰一人買い物袋を気にする人がいない。


「すごいね、妖怪って」

「でしょう?さ、早いとこお家に帰って宿題をやっちゃいましょう!」

「そうだね」


てくてくと商店街を歩く。途中たくさんの本を抱えたサトちゃんとすれ違ったけど、あの子はちゃんと家に帰れたんだろうか…一応手伝おうかって声かけたんだけど、自分で本を持って帰れないようじゃ読書好きの名が廃るから!って断られたんだよね。
…無理にでも持ってあげればよかったかも…


「あ、ケイちゃん」

「マオくん!こんにちは」

「こんにちは」


団々坂を歩いていると後ろからマオくんが声を掛けてきた。ふんわりと垂れ目を細めて笑うマオくんが一瞬女の子に見えた。


「ケイちゃん…」

「ごっほん……ま、マオくんは何してたの?」

「家で宿題やってたんだけどね、集中力切れちゃって。気分転換がてらコンビニでアイス買おうかなって思って」

「そっか」

「ケイちゃんは…その…」

「?」


マオくんはきょろきょろと視線を行ったり来たりさせた。えっと…どうしたのかな。なんだかマオくんは戸惑って…?いるのかな。しかも視線は私の後ろ…

…後ろ?


「おや、こんなところに桃色コインが」

「………」

「えっと……」


地面に落ちていたコインを拾うウィスパー。それにちらちらと視線が動くマオくんにすべてを悟った。マオくん、もしかして…


「…見えてたり、する?」

「……………………………………………………………………………うん」


たっぷりと間を開けて、まさに蚊の鳴くような声で言ったマオくん。あー…そうだったんだ…


「…ねぇマオくん、よかったらうち来ない?」

「え…?」

「さすがにここじゃあ、ね…それに暑いし、ついでに宿題も一緒にやろうよ」

「あ……う、うん…!」






prev / next

[ top ]