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▼ 4:猫さん遊びましょ


ある日、私は魚良におつかいに行くために近くの交差点で信号を待っていた。
そこでふっと、前に見たもののことを思い出す。


「そういえばねウィスパー、ここの交差点変な事故が多いんだよ」

「変な事故?」

「そう。寸止め事故って言われてて、車が人にぶつかる直前で止まるから、寸止め事故」

「なるほどー…それは間違いなく、妖怪の仕業ですね」


ウィスパーの言い分はこうだ。この交差点には地縛霊がいて、そのような事故を引き起こしているんだとか。
ちなみに地縛霊とは、死んだ場所から離れられずにいる霊のことで、そういったものは何かしらの未練があるらしい。

…以上、妖怪ウキウキペディ参照でした。って…


「ウィスパー!説明丸読みじゃない!何よウキウキペディアって!!」

「あくまで参考ですううううううう!!!!」

「…本当かなぁ」

「それじゃあケイちゃん!さっそく世の闇に潜む妖怪を、その妖怪ウォッチで照らしてください!」

「わ、わかったよぅ…」


いそいそとウォッチのレンズを開けた私。けれどそこではた、と思い出す。そういえば私、比較的力の強い妖怪ならウォッチなくても見えるんだった。
開けたレンズをパチン、と閉じ、周りをよーく見てみる。


「え?ちょっと、ケイちゃん?なんで妖怪ウォッチしまうんですか!?」

「私ね、少しだけなら妖怪見えるんだよ。えーっと…」

「そんなの初耳ですけどッ!!」

「言ってなかったからね。あ、いたよ、ウィスパー!」

「ほうほう、あれあ地縛霊ですか…」


信号の向かい側、私の今回の目的である魚良の前で、見覚えのある赤い猫が大きな欠伸したり、寝転んだりしていた。

…うん、かわいい。


「多分あの子が寸止め事故の原因だと思う。ねぇ、あの子の名前は?」

「え!?えーっと…あ、あれは“ジバニャン”です!」

「ジバニャン…あ!」

「ひょ、憑依!?」


そして何を思ったかジバニャンは、近くにいたサラリーマンの男性に取り付き、赤信号にもかかわらず信号を渡り始めた。
少し先に迫りくるトラック。ちょ、ちょっと!!あのままじゃ轢かれちゃうよ!!


「あ、危ないッ!!!」

「くらえ、ひゃくれつにくきゅう!!」


けれど、私が心配するよそでジバニャンは男性の中から飛び出し、そのままトラックに突っ込んだのだった。
のち、すぐにどこかへと飛ばされたんだけど…

あぁ、まだお昼なのに一番星が輝いたよ…





*****




「にゃぁ…」


しばらくしたら、向こうの方から満身創痍のジバニャンがよたよたと帰ってきた。な、なんというか…お疲れ様…


「うぅ…今日も車に負けたニャ…」

「…えと、大丈夫?」

「…に!?おおおお前!!オレっちが見えるニャか!?」

「えと、うん」

「ほ、ホントニャ!?ホントのホントに見えてるニャ!?」

「ちゃんと見えてるけど…」

「ニャんとぉー!あ、あんた!エミちゃんって子を知らんかニャ!?」

「エミちゃん…?ごめ、、知らないや…」

「そ、そうニャ…」


必死の形相で訪ねてくるジバニャンに、少し引き気味になりながら答える。
ジバニャン曰く、彼は生きていたときその“エミちゃん”という子に飼われていた猫らしい。とても仲良しで、寝るときはいつも一緒だとか。
名前も“ジバニャン”じゃなく、ちゃんとそのエミちゃんからもらった素敵な名前があったみたい。

けれど、ある日ジバニャンが散歩しているとき、うっかり車に轢かれ、ポックリ逝ってしまった彼を見たエミちゃんがこう言ったらしい


『車に轢かれたくらいで死ぬなんて…………ダサッ』


「「………………」」


あまりの衝撃に開いた口がふさがらなかった。


「…えええええええええええ!?」

「ひどいでございますぅううううううう!!!」

「そんなことないニャ!!エミちゃんはいい子、あれにはきっと理由があるニャ!!」

「どんな?」

「………な、なんかあるニャ!!」

「なさそうですねぇ」

「しいて言えば!オレっちがはねられなければエミちゃんだってあんなこと…
だから!!オレっちははねられないンエコになるのニャあ!!」


うーん、ジバニャンの言いたいことも考えもわかるんだけど…
それでも、他人を巻き込むのはよくないことだと思うんだ。

それをジバニャンに伝えると、彼は一人でもやってやると歩道を飛び出していった。


「ちょ、ちょっとジバニャン!?」

「ひゃくれつにくkにぎゃあああああああああああああああ!!!!」


そして再びお星さまへと姿を変えたのだった。


「ウィスパー、どうしよう…」

「…気が済むまでやらせてあげてはどうですか?」

「丸投げしたよね今」

「何のことやら」


トラックに突っ込んでいくジバニャンをひやひやしながら見守る。もう何度目かの星への変化を経たジバニャンに、私はふと思ったことを問いかけた。


「ねぇジバニャン」

「ぜぇ…ぜぇ…な、なんニャ?」

「どうしてそうまでして頑張るの?」

「さっきも言ったように、オレっちは車にはねられない猫になるニャ!あんたが人にとりつくのはよくないって言うから一人でやろうとしてるけど…」


寂しいニャ…
ぽつり、とこぼしたジバニャンの言葉にハッとした。きっとこの子は、寂しいんだ。誰かと一緒なら力が出るから、つい誰かに取り付いてこんな寸止め事故を起こしちゃうんだよ。

…なんだ、妖怪って言っても、根本は私たち人間とそう変わらないんじゃないかな。
ちゃんと気持ちがあって、考えがあって…


「…あの、さ、ジバニャン」

「ぐす…」

「さっきの言葉、取り消すよ」

「え?」

「だから…私にとりついてよ!」

「ええええ!ななな、何を言ってるんですかケイちゃん!?」

「ウィスパーは黙ってて!」

「理不尽ッ!!」


騒ぐウィスパーをスルーし、私はぽろぽろと涙を溢すジバニャンの前にしゃがみこんだ。


「ごめん、私何もわかってなかった。確かに一人って寂しいよね。誰かと一緒なら頑張れるって気持ち、私にもわかる。そうやって一生懸命に頑張れるって、とってもすごいことだと思うし、なによりジバニャンがエミちゃんを大好きな気持ち、すっごく伝わってくる。

だからさ、私と一緒に頑張らない?」

「!に、にゃぁあ…!!」

「一人が寂しいのなら、私が一緒にいる!私と友達になろう!ジバニャン!」

「うん…うん…!!」


ジバニャンに笑顔が戻ってきた。すると、ジバニャンが淡い光に包まれ、ポンッと何かがはじき出てきた。
それを慌てて両手で受け止める。


「これは…」

「妖怪メダル、ですね」

「…そっか」


ジバニャンのメダルを大事にポケットに入れる。


「そういえば、自己紹介がまだだったよね。私、天野ケイ」

「ケイ…あまの、ケイ…!」

「うん!よろしく、ジバニャン!」

「こちらこそ、よろしくニャン!」


バッと飛びついてきたジバニャンを反射的に抱き留める。

…うん、やっぱかわいいや。




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てことで、ジバニャンとの出合い方。
補足?で、ケイちゃんは、成長するにつれ見える力が弱くなっていった感じですね。






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