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富松成り代わり主



さっきまでかんかんと地上を照らして
いた空が突然泣き出した。木々は激しく揺れ、川は増水。先程渡ってきた橋も今渡るには頼りないくらいぎしりぎしりと風に吹かれている。
別に雨が降るくらいどうってことはない。野外授業とかでこんな天気の中野宿した事あるし、なんたって余程のことがない限り危険なことはしないにかぎる。

・・・しかしそれは僕一人、あるいは仲のいい同学年に限ることである。


「まいったな・・・止む気配がしない」

「お前が団子屋になんて寄るからだろ」

「仕方ねぇだろ、学園長から手紙飛ばされてきたんだから」


ぐちぐちと学園長先生に対して文句を連ねながら着物の袖を絞るこいつ・・・もとい富松なまえ。僕の一学年先輩であり、何かとムカつくやつ。女のくせに忍たまにいるし、何気に成績はいいし、周りが男だからだと妥協はしないし、腕っ節も強いしでもはやこいつは女じゃない。男女だ。


「にしても、雨宿りできそうな洞窟があって助かったよ」


そもそもの事の発端は、いつもの如く学園長の突然の思いつきだった。その被害者は主に忍たま二年生と三年生。そして追加任務と言う名の二次被害をもの見事に被ったのは僕と富松なまえであった。なんだよ、帰りに団子買ってこいって。パシリじゃないんだから。ほんと、ついてないよ。


「・・・これ、多分一晩中降るやつだよ」

「多分明け方辺りに先生方が探しに来てくれんだろ。仕方ない、今日はここで野宿するか」


すでに野宿する気でいたらしい富松なまえは、そのへんに荷物を置くとせっせと落ち葉を拾い、火種をつけ始める。順応性がよすぎて自分たちがいっそキャンプに来てるみたいだな・・・。


「おい池田、火炊けたぞ」

「あっそ・・・て、うわッ!ちょ、お前!なんて格好してるんだよ!」


癪だけど、僕も彼女にならって小枝をちまちま集めているとき、ふと富松なまえに呼ばれ振りかえると、袴に前掛け一枚ととんでもない格好で呑気に着物を焚き火に翳す富松なまえがいた。


「あ?何言ってんだお前」

「いいからさっさと服を着ろって!」

「濡れたままだと風邪ひくだろうが。こういう時はいっそ何も着ない方がいいんだよ」


いっそ清々しいほどにいけしゃーしゃーとのたまう富松なまえに僕は一瞬目眩にも似た何かに襲われる。当の本人は知らこく服乾かしてるし、危機感ないし・・・僕だって一応男なんだぞ。少しは恥ずかしがったりするもんじゃないのか?
・・・・・・いや、こいつの事だ、きっと本当に気にしてないに違いない。


「池田、服乾かさないのか?」


きょとり、と僕を見つめる富松。けれど僕は直視できない。雨のせいでしっとりと濡れた赤毛や普段制服で隠れている白い肌だとか程よく筋肉のついた腕だとか思わず噛みつきたくなる鎖骨とか腕っ節が強い割に思いのほか細い体だとか色々なことが脳内を・・・だあぁぁぁあああああ!!!なんつー事を考えているんだ僕はッ!!!
これじゃあまるで僕が富松を女として見てることに・・・


「おい池田、本当に大丈夫か?なんか顔赤いけど・・・」

「ッ!!馬鹿野郎!」

「はぁ!?てめ、人が心配してりゃ無下にしやがって!」

「ふざけんな!誰が心配してくれって頼んだよ!」

「うるっせぇ!ちったぁ静かにしやがれ!」

「お前の方がうるさいんだよ!」


やっぱりさっきのは一時の気の迷いだったんだ!口を開けば罵詈雑言の数々、荒い口調、暴力的な仕草!一瞬でもこいつが女に見えただなんて僕あたまおかしいんじゃないの!?





「三郎次は素直じゃないな」


後日、無事に学園へと帰還した僕らの一部始終を文句を織り交ぜながら久作に話すと、呆れたような悟りを開いたようなまこと奇っ怪な顔で僕を見てきた。なんだよその顔腹立つ。


「はぁ?どこが。日々明朗快活と生きてんのにそういう事言う?」

「いやそうじゃなくて。・・・あのな、三郎次」


ぽん。何か悟りを開いたような顔で僕の肩を叩いた久作は、しみじみと呟いた。


「お前・・・一周回って実は富松先輩の事大好きだろ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

「あ、いたいた。おーい池田ー!お前、今日火薬委員会の当番じゃないのか?久々知先輩が探してたぞ!」

「なまえー、教室はこっちじゃないぞ?」

「あっちだー!」

「ちゃうわボケ!次は実技だっつったろ!」


久作に言われたことを理解しないまま呆然としていると、お馴染みの方向音痴二人組をずーるずーると荒縄で引き連れた富松なまえがやってきた。ちょっと身長が高いからって見下ろすなよな腹立つ。なんていつもならものの数秒もの間で口から飛び出すのに、今は上手く言葉が出ない。むしろ、さっき久作に言われたことに思考を持っていかれて何が何だかわからなくなっている。


「?池田?大丈夫か?具合でも悪いんじゃ・・・」


ぴと。不意に富松なまえの手が僕の額に触れた。あ、意外と指細いんだな。そんな感想が頭をよぎる。富松なまえの存外柔い手が僕の額に触れている。そう理解した瞬間、僕の全身は湯沸かし器になったかのように一瞬で沸騰したような気がした。


「おーい、池田・・・?」

「・・・・・・す、」

「す?」

「好きだバカヤロー!!!!」




気付けばそんなことを叫びながら僕は脱兎のごとくその場から逃走した。





「・・・・・・・・・は、」

「わーお、池田ってばダイターン」

「ついになまえに嫁の貰い手ができたぞー!!!」

「・・・・・・能勢、どういう状況なんだこれは」

「ほっといたらいいと思います(かわいそうな三郎次。微塵も伝わってない)」




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Kana様、この度はリクエストして下さりありがとうございました!
久しぶりの忍たまでしたので、口調がだいぶ迷走しておりますが、こんな感じでいかがでしょうか・・・?

また何かありましたらご連絡等していただければすぐに書き直し致します・・・!

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