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▼ 13:扱いやすい人


「ねぇマック」

「ん?なんだ?」

「ずっと気になってたんだけど、マックはどうしてウィスパーたち妖怪のことが見えてるの?」


お母さんが持ってきてくれたケーキを突きながら思い切って聞いてみた。さっきウィスパーが言ったように、マックは妖怪ウォッチを持っていない。元々視えるんだ、なんて言われたらそれはそれで納得するけれど、どうしてか彼はその線はないように見えた。


「そうそう、そうなんでうぃす!妖怪ウォッチを持っていないあなたがなぜ、我々を視ることができるんでうぃす?」

「教えてやってもいいけど、妖怪じゃなくて『エイリアン』な」

「(わざわざ言い直るあたり、この人相当頑固でうぃすね…)」


何だかウィスパーが疲れたような目をしているのを尻目に、マックはフォークをカシャン、と皿において向き直る。


「あれは、お前らがこの街に来るちょっと前の夜だった。空から光る『何か』が、街に落っこちてきたんだ」

「何かって…それって隕石か何か?」

「まぁ、確かに街のみんなは『隕石が落ちた!』って騒いでたな。けどあれは隕石じゃなくて、本当はUFOだったんだ!」

「ハァ〜?UFOぉ?な〜んか嘘くさいでうぃすねぇ」

「嘘なんかじゃないさ!」


UFOねぇ…そういえばここに引っ越してきたての時、うちにFBY捜査官だっていうマルダーさんとカクリーさんが来たんだっけ。性質かあの2人も、UFOを見ただのなんだのって言ってた気がするなぁ…
それとマックの話は関係あるのかな…?


「で、その時の証拠として俺がUFOの落ちた場所で拾ったのがこれだ!」


そう言ってマックが差し出したのは、先日私が彼に届けた例の青い石のついたペンダントだった。…てことはつまり、この青い石がUFOの何かしらって、こと…?


「『UFOストーン』、俺はそう呼んでる。こいつの不思議な力が、俺にエイリアンたちの姿を見せてくれるんだ」


元々人間と妖怪っていうのは、同じ場所にいるけれど違う場所にいる…つまり一枚次元を挟んだ場所に存在していて、妖怪が視える人っていうのは霊感があるのはもちろんなんだけれど、妖怪たちがいる別次元との波長が合うから、その姿が見えているのだ。
つまり、今の話からするとマックは元々妖怪とか、そう言った類のものは視えていなかった。けれど、UFOストーンを身に着けたことによってそれから発せられる磁気がマックの周辺の磁気を歪ませ、妖怪が視えるような波長のピントが合ってしまったんだと思う。

石とは言えど、もしそれが本当に宇宙から来たものだと仮定したら、この地球とは違う磁気が流れていてもおかしくはないから。


「…おい」

「へ?」

「お前、その顔は信じていないな?」

「そ、そんなことないよ。ただ、突飛な話だなぁって思って」

「信じてねーじゃんか!よーし、だったらボブーさんの所に行こうぜ!」

「ボブじーさん…て、誰」

「このUFOストーンをペンダントにしてくれた職人だよ。東にあるイーストカシュー地区で時計屋をやってるから、そこで俺の話が嘘じゃないって証明してやるよ!」


いや別に疑ってないってば!叫んでみるもののあっという間にケーキを平らげたマックは瞬く間に部屋を出て行った。…嵐かよ、あいつ。


「行っちゃいましたねぇ」

「今までにないタイプの人間だな」

「ほんと…てか、あれ私も行かないと」

「おーい、何やってんだよ、早く行くぞー!」

「……いけないよねぇ」

「そうみたいニャンね」


窓の外から聞こえるマックのでかい声にため息を吐きながら、いそいそと出かける準備をする私だった。


「お母さん、ちょっと出かけてくるね」

「暗くなる前に帰ってくるのよ?」

「はーい」


家の外に出るとマックは消火栓に寄りかかりながら私が出てくるのを待っていてくれたらしい。


「おっせーぞ」

「先に行っててもよかったのに」

「…お前、ボブじーさんの店とか知らねーだろ」

「あ」

「まったく…ほら、行くぞ」


お前って意外とボサッとしてんだな。なんて余計な一言をいただきながらマックの案内のもと、イーストカシュー地区へとやってきた。そういえば私、ここ初めて来たや。


「ふぁー…」

「おい、あんまよそ見しながら歩くなよ。また前みたいにトラックに轢かれるぞ」

「あ゛…だ、大丈夫だから!さすがにもう2回目は…」

「ないとは言い切れないだろ?」

「いけずか…」

「お、ついたぞ!」


そう言ってカランカラン、とドアを開けて入っていったマック。…なんか、見るからに高級感あふれてるんだけど、あの人なんでこんな店知ってんの…?
謎が謎を呼んだ瞬間であった。…とりあえず、入ろうか。


「お、お邪魔します…?」


そぉーっとドアの隙間から店内を覗き込むと、もふもふとしたおじさんとマックがカウンター越しに話しているのが見えた。私の声が聞こえたらしいマックは、中途半端に顔だけのぞかせている私を訝し気に見つめると、こいこいと手招きした。


「何やってんだよそんなところで。入って来いよ」

「あ、う、うん…」


そそくさと店内に入り、見渡す。うわぁ…めっちゃ高そうな時計が所狭しと…ドル表示されてるからあまり詳しくはわからないけれど、きっと一つ一つ手作りでいいお値段するんだろうなぁ。なんて、小学生じゃあるまじき考えをしていると、カウンターの向こうに座っていた、多分ボブおじさんであろう人物が朗らかに笑った。


「はっはっは、これはこれは珍しい。まさかあのマック坊ちゃんがここに女の子のお友達を連れてくるとは」

「坊ちゃん?」

「ちょ、じーさん!坊ちゃんって呼ぶなっていつも言ってるだろ!?」

「ははは、それは仕方ありませんよ。坊ちゃんは坊ちゃんでしから」

「ちぇーッ、いっつもこれだからなぁ…」


ところどころボブおじさんの発言に気になるところを見つけてしまったけれど、まぁいっか。マックもあまり深入りしてほしくなさそうだし。

ちょっとジバニャン、ガラスケースに乗らないでよ。万が一壊れでもしても弁償なんてできないんだからね。


「なぁじーさん、こいつらにUFOの話してくれよ!」

「それは構いませんが…おや、お友達がしているそれは、もしかして最新型の妖怪ウォッチU1ではありませんか?」

「え!お、おじさん妖怪ウォッチのこと知ってるの!?」

「もちろんですとも。私は時計屋ですよ?時計のことならなんだって知っております」


そんなもんなのかなぁ…。あ、そういえばチョーシ堂のおじさんも妖怪見えてたし、妖怪ウォッチのこと知ってたっけ。何、時計に通じる人たちってみんな妖怪視えてるの…?だとしたら怖いんだけど。


「そんなに有名なのか?その時計」

「知る人ぞ知る、てことですよ」

「ふーん…それより、早く話してくれよ!」

「いいですよ。そうですねぇ…その代わりと言っちゃなんですが、お使いをお願いしてもいいですかな?私は今仕事で手一杯ですので、代わりに買い物へ行ってもらえませんか?」

「え?それは構いませんけど…」

「それは助かります!この店の近くに、モーシンデルマートというスーパーがございますよ。そこで、このメモに書いてあるものを買ってきてほしいのです」


す、スーパーの名前がモーシンデルとか不吉極まりないんだけど、突っ込んだら負けだよ、ね…?
引きつりそうになる頬を必死に押さえつけ、ボブおじさんからメモを受け取った。えっと、ムール貝にスイートコーン、キャラメルピーナッツにその他もろもろ…け、結構多いな…1人で持ってかれるかな…


「スーパーまでの道案内は、そこでお待ちのマック坊ちゃんにお任せしますので」

「えー?なんで俺が…」

「来たくなければ来なくてもいいよ」

「そんなこと言ってないだろ!」


さっさと行くぞ!そう言って私の腕を引っ掴んでマックにこっそりと笑った。この人案外扱いやすいなぁ。なんて。


「おやおや、あのお嬢さんはずいぶんマック坊ちゃんの扱いが上手いようだ」


誰もいなくなった店内でボブさんがそんなことを言っていたとかなんとか。







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