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▼ 11:新事実

リッキーとショーンが言っていた噂を解明するべく、何か手掛かりを探していたら街のあちこちで巨大なガラクタを見つけた。歯車だったりタイヤだったり、物は様々だけれどすべてに共通しているのが、巨大であること。もしかしたらこれらは、ガラガラ音を発する本体が落としていったものたちなのではないかという結論に至った。

聞き込みとかしていたら、どうやらこのガラクタたちは街のはずれにある“スクラップヤード”という場所に置かれていたゴミだったらしい。スクラップヤードとは、この街のはずれに存在するゴミ処理場…基ゴミ置き場らしく、古い車やらコンテナやらが積み木のようにズラーッとたくさん放置されているらしい。日本ではあまり見かけないよね、スクラップヤードとか。どこかにはあるんだろうけれど、それを私が見たことあるかと聞かれれば答えはノーだ。

もしそのガラクタたちが巨人の落し物だと仮定したら、巨人はスクラップヤードからやってきたことになる。

…まぁ、どっちにしろ現場に行ってみることにはわからないよね。てことで…


「来ちゃったでうぃすねぇ」

「来たのはいいけど、すっごいオイルくさい。スクラップヤードってどこもこんなもん?」

「知りませんよ、私だって初めて来ましたから…」

「まぁ、そうだけどさ」


所狭しと積み上げられたガラクタを眺めながら奥へ奥へと進んでいく。本当にこんなところに巨人なんているのかな…


「ケイ、後ろニャ!」

「ッ!」


ジバニャンの声に咄嗟に手を後ろに振りかざす。瞬間、私の手から飛び出した赤い炎が何者かに向かってぶち当たった。


「あちッ!あちちちッ!!」


どうやらそれは瓦礫の中から飛び出してきた妖怪みたいで、お尻に燃え移った炎をどうにか消そうとしながらどこかへと走り去ってしまった。
てゆーか…


「なんだよ、私の意志に反して勝手に出てくるんじゃん…」


普通の人間は手から炎を出したりしない。つまるところ、キュウビの力が私の防衛本能とリンクして発動してしまったらしい。無意識って怖いね。


「…もう割り切るしかないでうぃすね、それ」

「腹立つけどね」


あれだけ否定した力をこうも早い段階で使うことになるなんて思いもしなかった。途中道を塞いでいたスクラップたちをキュウビの神通力でどかしたりしながら先に進んでいくと、最奥についたらしくスクラップに囲まれた行き止まりにたどり着いた。


「あれ、行き止まり…?」

「それにしてもとんでもなく大きい瓦礫の山でうぃすねぇ」


しみじみとウィスパーが呟いた。確かに、よくこんなんになるまでほったらかしにしてたよねぇ。崩れたりしないのかな。
そんなことを思いながら瓦礫の山を眺めていると、不意にヤマトがぼふんッと妖怪の姿に変化した。


「ヤマト?どうしたの?」

「気を付けろ。ここ、大きな妖怪の気配を感じるぞ」

「もしかして、例の…?」

「可能性は大いにある」

「来るニャンよ!!」


ジバニャンの声と同時に、積み上げられていたガラクタたちがひとりでに一か所に集まりだした。大量に集まるガラクタたちは複雑に組み合わさり、そして土埃が晴れたその先にはなんかトランスフォーマーみたいなよくわかんない物体がいた。


「何、あれ。合体?トランスフォーム…?」

「ボケてる場合じゃありませんよ、ケイちゃん!」

「ボケてないから。事実だから」

「どうでもいいニャン!さっさと構えるニャン!」


襲い掛かってきたガラクタ…基トランスげふんげふん…ガラクタ妖怪にひとまず距離を取った。本当は友達妖怪を呼びだしたいところだけど、生憎とどっかの誰かさんのせいでジバニャンとヤマト以外のメダルは持ち合わせていないのだ。

しかたがない、か…


「狐火!」


周囲に数個の狐火を出現させ、ガラクタ妖怪にぶつける。あまり妖気を込めていなかったからか、効果はほんの少ししか見られない。近くに降り立ったヤマトが、そんな私を見て心配げに眉をひそめた。


「…いいのか、ケイ。あれほどキュウビの力を否定していたではないか」

「…思い出したの、私がキュウビの力を手に入れた理由。元々、友達を守るために、守られてばかりは嫌だと思ったからこそあの時願ったんだよ。人外になることを受け入れたわけじゃない。ただ私は、自分の手の届くものを守りたいだけ」


だから、出し惜しみなんてしてられない。
ぶわり、と炎が私を取り囲む。これはキュウビの力が具現化したもの。だから、これを纏うことによってキュウビが本来持つ力と同じものを扱うことができる。イカカモネの時がそうだったから、今回も同じ要領ですればいいだけ。


『まったく、君は本当に欲の強い子だねぇ』

「うるさい。つべこべ言わずに私に力を貸して」

『はいはい、仰せのままに』


キュウビの力を纏う。それはキュウビと一体化するということ。だから彼の声が私の頭にダイレクトに響くことは何らおかしいことではない。視界の端に揺れる9本の尻尾を尻目に目の前のガラクタ妖怪を見上げた。


『ほら、来たよ』

「わかってる!」


ガラクタ妖怪が雪崩のように吐き出してきた瓦礫を宙に浮かぶことによって回避し、炎を一か所に収束させる。私が何をしようとしたのか察したらしいヤマトたちは、素早くその場から離れた。


『ゴミはきちんと、燃えるゴミに出さないとね!』

「『紅蓮地獄!!』」


集めた巨大な炎の塊をガラクタ妖怪にぶつけると、ガラクタ妖怪は鈍い悲鳴を上げながら炎の藻屑となっていった。なぜガラクタが妖怪になったのか。私の憶測だけれど、もしかしたらガラクタ一つ一つに宿る思念体が、長い年月をかけて妖怪へと姿を変え、こんな騒ぎを起こしたのではないのだろうか。

…まぁ、真実は本人のみぞ知る、だけど。


「お疲れ様でした、ケイちゃん!」

「…うん」

「大丈夫ニャ…?」

「なんとか、ね。みんなも怪我はない?」

「平気ニャン!」

「そっか」


よかった。ほっと胸をなでおろしながらキュウビの力を解く。…と、途端に体全体に大きなおもりがのしかかったような倦怠感に苛まれ、思わず膝を着いた。


「ケイ!大丈夫か!?」

「平気ッ!慣れないことをしたから、体がついて行かないだけだよ。少し休めば治るから」

「ニャー…」


地べたに座り込み、深く息を吐く。とにもかくにも、これで街を騒がせているガラガラ音の正体と道中に転がっていたガラクタの理由はわかったわけで。一件落着…で、いいのかな?


「はぁー、安心したらおなかすいたー!」

「もうすっかり暗くなってますもんね。早く帰らないとお母たまに叱られますよ?」

「ほんとだね。…よし、帰ろっか!」

「体はもう平気なのか?」

「平気だってば。もう、みんなして心配性だなぁ」


―カランカラン…


帰ろうと立ち上がった瞬間、背後からそんな乾いた音が聞こえた。バッと振り返ると、そこには呆然と立ち尽くすマックがいて…えッ!?


「ま、マック…!?」


もしかして今の、見られた…!?
焦る私をよそに険しい顔をしたままずんずんと歩いてくるマックに冷や汗が止まらない。まさかこんなところに人…ましてやマックがいるなんて思ってもみなかったから…!どうしよ、どうする…!?このまましらを通すか…?
この状況を打破する言い訳を必死に考える私をよそに、ついにマックは目の前にやってきた。ちょお、来るの早すぎでしょ…!


「お前、もしかして…」

「えと、その…」

「赤いネコ」

「ニャ?」

「白いフヨフヨ」

「うぃす!?」

「でっかい、カブトムシ…?」

「む、」


今、マックはなんて言った…?赤いネコ、白いフヨフヨ、でかいカブトムシ…視線はきちんと、彼らの方を向いていた。…え、えッ!?ちょ、待って、はッ!?
内心騒然とする私をよそに、目の前に佇むマックはさらっと飛んでも発言をしたのだった。


「お前も見えるのか?そいつらの姿が」





「…え、はッ…はああああああああああああ!?!??!?」






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