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▼ ゆきむー様よりリク

夢主が烏天狗と酒呑童子にエンカウントしたら。





「うぅ…」


「………」


通学路に何やら怪しい人が道のど真ん中で倒れていた。道のど真ん中、しかもとうせんぼするかの如く露骨に身を投げ出しているそれに私は思わず顔をひきつらせた。何、これ。露骨すぎて逆に笑えるんだけど。


「…ねぇ、ウィスパー。見なかったふりしていいかな」

「さすがにそれはないでしょうケイたん。私あなたをそんなドライモンスターに育てた覚えはありゃーせん!」

「あんたに育てられた覚えすらないんだけど…」


まぁ、それはさておき…。この人どうしようか。正直あまり関わり合いになりたくないのが事実。だって、この人の傍らにでっかい杯が転がってるんだもん。しかも変な鬼みたいなお面付けて…。これさ、絶対妖怪が悪酔いして道中行き倒れたパターンだよね。私酔っぱらいの介抱とかしたくないんだけど。


「そういわずに助けてはくれんか…」


どうするべきかを悠長に考えていたのがいけなかったのだろう、今までピクリともしなかった屍(違う)が突然私の足をぐわしッと引っ掴んできたのだ。


「きゃあああああああああああああああ!!!!」

「なぁお嬢さん、どうか、どうか俺に水を…!!」

「やだやだやだやだ離してちょっとウィスパーあああああああああああああああ!!!!!」

「お嬢さ…」

「あああああお労しやケイちゃんんんんんー!!何もできない私めをどうか許してくだしゃいー!」

「ほんと使えない」

「うぃすッ!?」


なんかウィスパーが向こうの方でいじけだした。ほんっと意味わかんない!!使えないのはいつものことなんだからこういう時くらいちょっとは頑張ってよッ!!なんて思ったり思わなかったり。とにもかくにも、小学生のメンタルでは限界値を振り切りそうなこの恐怖体験にじわり、と視界が歪んだ瞬間、私の足首を引っ掴むそれの脳天に鋭い打撃が振り下ろされた。


「幼気な女子をビビらせるんじゃない!!この飲んだっくれがッ!!」

「ぐふッ」


かくり、と首を落としたそれを冷ややかな目で見下すその人は、しゃんッと錫杖を地面につき、鼻を鳴らした。


「まったく、これだからこいつは…。おい、大丈夫か?」

「…え、あ、はい…」


あまりの衝撃にこぼれかけた涙は引っ込んだ。青い髪をゆらした彼…?彼女…?は中性的な顔をゆるめると錫杖を持っていないほうの手を私に差し出してきた。…つかまれ、ってことでいいのかな。
恐る恐る手を差し出すと、ぐっと強い力で引き立たせてくれた。


「あ、ありがとう…」

「礼はいい。それよりも、うちの酒呑童子が悪かったな。お前を怖がらせてしまった」

「いや、その…まぁ、怖かったですけども…」

「…すまん」


しゅん、と眉を垂れさせたその人に思わず慌てた。も、もういいですって。保護者が来てくれただけで私は救われましたから。

口が裂けてもこんなこと言えないけれども。


目の前の人は「おい、起きろッ!」と未だ地べたで伸びている酒呑童子と呼ばれた彼を足蹴にした。それに軽く戦慄きながらも酒呑童子の様子を伺っていると、うーだかあーだかわからないうめき声をあげながらのっそりと起き上がった。


「はぁー、よう寝たわ…。ん?烏天狗、何故おぬしがここにおる」

「お前を迎えに来たからに決まってんだろ!大体、なんでスポーツドリンクでここまで酔っぱらうんだ!!」


え、杯の中身スポーツドリンクだったんだ…。冷めた目で見てっしまったのは致し方ないと主張する。


「あまりにも長いこと禁酒してたからのぉ、久しぶりに酒を飲みたくなったんじゃ。でっかくだから月見酒でもしようかとこっそり持ち出したんじゃが…そっからの記憶がないのぉ…。なぁお嬢さん、お無視はなんか知っとるか?」

「あー………」


ちらり、と隣にいる烏天狗を盗み見ると、それはそれは恐ろしい般若を背負っていることで。烏天狗はしゃんッと錫杖を地面に一度打ち付けた。


「ほう…?禁止されている酒をこそこそと持ち出した挙句、この女子に働いた粗相を微塵も覚えていないと…?」

「粗相…!?はッ…!?俺、このお嬢さんに…!?」

「そうだ!!ようやく思い出したか!!」

「このお嬢さんに……





無理やり致してしまったのか…!?」





「違わいッ!!!」

「ごふッ」


今度こそ撃沈した酒呑童子をドン引きした目で見つめていると、疲労感を顔いっぱいににじませた烏天狗が振り返る。


「本当にすまん…こいつはとんだアホなんだ、どうか言われたふざけたことは忘れてくれ」

「…そうします」

「そういえばお前の名を聞いてなかったな。私は烏天狗だ」

「天野ケイです」

「ふむ、ケイと言うのか。しかと覚えたぞ。じゃあな、ケイ。私たちはもう行く。いつの日かまた会おう」

「う、うん…またね…」


酒呑童子の首根っこを引っ掴んだまま飛び上がった烏天狗は、そのまま遠くへと視えなくなってしまった。


「…嵐が去ったみたい」

「うッ…うッ…ケイちゅわん、私を…どうか私を捨てないでぇぇええ…!」

「あ、ウィスパーいたんだ」

「うぃす…!」





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ゆきむー様、この度はリクエストありがとうございました!
途中ウィスパーが完全なる空気だったのと、酒呑童子と烏天狗の口調が割と迷走してましたがきっとそれはきのせい((

烏天狗さんは性別どっちなんでしょうね…管理人的には男勝り口調な女の子が好みです。





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