▼ Kana様リクエスト
「やっぱりケイって、普通よね」
夏休みも折り返し地点に差し掛かった頃、私の家に遊びに来たイナホちゃんとUSAピョンとゆっくりしていると、突然花子さんがやってきて何を言うわけでもなくイナホちゃん共々いきなり雲外鏡に突き飛ばされた私たちは、気付けば見知らぬ服屋さんのど真ん中に立っていた。そして冒頭の言葉である。ねぇ待ってどこここ。
「そして私はなんでこんな所にいるのだろうか・・・」
「いろんな服が揃ってますなぁー・・・お!?あ、あれは、セラピアーズのコスプレ衣装!!うひょー!こんなのも置いてるんだー!」
「なんでそんなのが置いてあるのよ」
「ここは私がプロデュースしたニュー妖魔シティに展開するブティックよ。あなたたちをここに連れてきたのは他でもないわ。妖怪ファッション誌yon-yonの読者モデルとして、ここの服を着てほしいの」
「「・・・・・・・・・は?」」
読者モデル・・・いわゆる“読モ”と略されるそれは、大学生やOLさんが一般読者として誌面に登場するモデルのことを言う。片や普通、片や全方位型オタクとモデルのチョイスがおかしい。もっといただろうに八百比丘尼とかふぶき姫とか!そもそもyon-yonって何!?
「そのへんも考えたのよ。けど、表紙を任されるからにはこれまでのやり方じゃ面白くないわ!誰もが知っていてなおかつそれなりの人気を誇る・・・そう、つまり人間であるあなたたちが最適だと判断したの!」
その判断間違ってる。声を大にして言いたかったけれど今そんなこと言ったら痛い目見るの分かってるから言わない。しかも表紙かよ。ちらり、と隣のイナホちゃんを盗み見ると、顔面蒼白にして花子さんを見つめていた。ちょ、この子ぶっ倒れない!?大丈夫!?
「えと・・・イナホちゃん・・・?」
「わわ・・・私そういうのはちょっとほらモデルだなんてスタイル抜群で顔よし人気よし見た目からして非の打ち所がないような方たちの方がだって私普段マシンガントークだけど人前とか無理だし地味だしオタクだし服とか全然全くもってわかんないし雑誌なんて読むとしたらヌーとかアニメ雑誌とかぐだぐだぐだ」
「ええいつべこべ言わずにマネキンになりなさい!!プロデュース特攻隊出動!!」
「「「ラジャー!!」」」
「「ぎゃーーーーーッ!!!!」」
「うんうん、私の見立てに狂いはなかったようね!」
「ケイちゃんかわいー!」
「イナホじゃないみたいで新鮮だわぁ」
私たちの服を引っペがしにかかったえんらえんらやふぶき姫、人魚ちゃんなどなどが口々に賞賛の言葉を投げかける。
全体的にガーリーな感じでまとめられた私は、足にまとわりつくフリフリのスカートを指でつまみあげる。・・・こんなフリフリなの着たことない。
対してイナホちゃんは、夏の森ガールとやらをイメージしたらしく、白いワンピースに茶色のロングブーツと落ち着いた雰囲気でコーディネートされていた。
「イナホちゃんかわいいよ」
「恥ずか死・・・」
「さぁグズグズしてる暇はないわ!今度はロケ地に向かわないと!あなたたちが駄々をこねるからあとの予定が押されてるの!」
「「すんません・・・」」
なぜ怒られているのか果てしなく疑問だけれど、もう謝るしかない。
雲外鏡によって街の一角へと連れてこられた私たちは、通行妖怪の通りが激しいそこで写真撮影が行われた。めっちゃ恥ずかしい死にそう。もうポーズとかどうすればいいかわかんないし、笑顔とか言われても周りからじろじろ見られて引きつってるし・・・
もう、やだ。
「少し休憩にしましょう。喉乾いたでしょ?」
「「わーい・・・・」」
撮影場所から少し離れた所のベンチに座り込んだ私たちは、口から魂が出る勢いでため息を吐き出した。もう、ね、花子さんの指示が細かいの。腕の角度とか首のかしげ方とかその他もろもろ。・・・いやぁ、プロだわぁ。
「ケイちゃん、私たち何でこんなことしてんだろ・・・」
「それ、私が聞きたい・・・」
「ヘイ、ガールたち!」
不意に、ぐったりとしている私たちに声がかけられた。しかもめっちゃ聞き覚えのあるやつ。
「そんな顔してどうしたんだい?可愛い顔が台無しだよ!ユーたちの瞳、実にワンダッホーゥ!」
顔をあげた先にはレジェンド妖怪ことイケメン犬がばちこーん、とウィンクをかましていた。イナホちゃんに。すぐさま彼女から距離をとった私は、少しの間様子を見る所に徹した。私は空気私は空気私は空気。
「これから時間はあるかい?よければあそこのカフェでボクと一緒にお茶しないかい?」
「ファッ!?」
「ちょい待ちー!!!あーたね、人が声をかけようとしていたのをしれっと横取りはどうかと思いますけどぉ!?」
「って、ウィスパー待って何言っちゃってんの!?」
「ユーの出る幕はないよ!ここはイケメンであるボクに優先権があるのさ」
「いや、だから・・・!」
「ィヤッホオオオオオオオ!!かわい子ちゃんのメガネゲットだぜ!」
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!め、メガネ・・・!!!メガネを返sごふぅッ!!」
「い、イナホちゃん大丈夫!?」
「だ、大丈、夫・・・メガネを・・・メガネをぉおおお・・・!」
電柱に豪快に顔面を突っ込んだイナホちゃんは「メガネ・・・メガネ・・・」と呟きながらメガネを掻っ攫っていった人面犬たちを追っていったのだった。あ、足取りがとてつもなく怪しいんだけど大丈夫だろうか・・・
ぽつねん、と取り残された私は、さっきの出来事をとりあえず見なかったことにし、大通りを行き交う妖怪達を眺めていると、その中で見覚えのあるにゃんこを見つけた。
「あ、フユニャンだ。おーい、フーユニャーン!」
「ん?え・・・えぇ・・・!?」
「?どうしたの?そんな顔して」
「えっと・・・君はどちら様だろうか・・・」
「何言ってんの?私は・・・」
そこではた、と思い出した。そう言えば私、花子さんプロデュースのせいで見た目が全くの別人になっていたんだった。声掛けたはいいものの、どうしよ・・・・・・。よし、しれっと間違えたフリしよっと。
「あ、ごめんなさい人違いでしt」
「お、こんなところにいたのか!探したぞ!」
きょとん、と可愛らしく首を傾げるフユニャンを横目に早々に立ち去ろうと回れ右をした瞬間、私の方にいきなり浅黒い腕が巻きついたのだった。
「は、・・・」
「え、エンマ大王!?」
「悪いなフユニャン、こいつの先約は俺なんだ。諦めな」
にやり、と私に流し目を送りながらフユニャンを挑発するエンマ大王。いや、先約も何も今日の私はイナホちゃん以外誰とも約束をしていない。なんだ、なんでこんな時に限ってモテ期みたいなのが来てるんだ。そしてなぜ私は妖怪ウォッチを家に置いてきてしまったんだ。
なぜだ、なぜなんだ私ィイイイイイイ!!
「・・・お言葉ですがエンマ大王。先ほど彼女は俺に用事があるように見えました。よってエンマ大王の発言には疑問が浮上します」
「へッ、理屈っぽい奴だな」
「どうとでも」
バチバチバチ
・・・・・・・・・気のせいかな。あの2人の間で火花が散ってるように見えるんだけど。てゆーか、なんで本人そっちのけで話が進んでいるの。私何も一言も喋っていないはずなのにどうしてなぜ・・・・・・あぁあッ!ついに得物まで出し始めたのあの人たち!!!流血沙汰は嫌よ!!
・・・仕方ない、こうなったら・・・
「三十六計逃げるが勝ち!!」
「あ、おい!!」
「待てよ、お前!!」
ウワァアアアアアアア!!追ってこないでえええええ!!!
「・・・あの子たち、いくらなんでも帰ってくるの遅すぎやしないかしら・・・」
「ニャニャ?花子さん、こんニャところで何してるニャン?」
「撮影かなにかしてるダニよ」
「あら、ジバニャンにUSAピョンじゃない、丁度いいところに。ケイとイナホを見なかった?」
「ケイとイナホ?」
「そういえば、エンマ大王とかフユニャンとかイケメン犬とかに追っかけられて逃げ回ってたけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、」
「どうしたダニ?」
「・・・2人にモテモ天とモテマクールくっつけたままなの忘れてたわ」
「「・・・・・・・・・・・・」」
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kana様、この度はリクエストしていただいてありがとうございました!!そして大変・・・大変・・・!!大っ変長らくお待たせいたしまして申し訳ございませんんんん!!!
リクエストに沿っているかわかりませんが、こんなのでよろしければどうぞお収めくださいませ・・・!!
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