▼ 愛梨様よりリクエスト
妖怪大運動会は、途中途中で若干のグダグダはあったもののどうにかこうにか終わりに向けて滞りなく進んでいった。私が出る大玉転がしも無事に終わることができて心底安心している。
そして妖怪大運動会本部から人間用に支給されたお弁当が予想以上においしくて、ついつい食べすぎちゃった。
《さぁー、妖怪大運動会も遂に最終種目となりました!!皆さんお待ちかね、何でもありの妖怪人間混合の混合スウェーデンリレー!!》
「ケイちゃん、行きますよ!」
「は?私もう自分の種目終わったんだけど」
「何言ってるんでうぃすー?混合スウェーデンリレーは全員必須出場種目ですから、ケイちゃゆと出ないといけませんよ?」
「はあ!?なにそれ聞いてないんだけど!!」
「プログラムに書いてありますよ?ほらここ」
そう言ってウィスパーが見せてきたのは、混合スウェーデンリレーが書いてある右下に、米粒ほどの大きさで書かれてある“必須出場種目”だった。
・・・・・・わかるわけないじゃん、気付くわけないじゃんバカじゃないの?
「ケイちゃーん!」
「あ、イナホちゃん・・・」
渋々入場門に向かっていると、後ろからUSAピョンを引き連れたイナホちゃんとケイゾウおじいちゃんが駆けてきた。イナホちゃんはまだしも、まさかケイゾウおじいちゃんまでいるとは思わなかったよ。おじいちゃんと会うのはウバウネ以来だから、会えてすっごく嬉しい。
「ついに最終種目だねー!フフ、フフフフ」
「こ、怖いんだけど・・・てゆーかなんでそう嬉しそうなの?」
「本当であれば今頃セラピアーズのDVD鑑賞しているところだったのにぃー!いきなり召喚されて今日の予定が潰れちゃったんだよー!」
「・・・さっきからずっとこの調子ダニ」
「鬱陶しくて仕方ねぇ」
心底げんなりした様子のおじいちゃんとUSAピョン。あー、まぁ・・・あとちょっとだし頑張ろうよ。
「ケイ!」
「わッ!」
ギャーギャーと未だに騒ぐイナホちゃんたちを遠目に眺めていると、突然首に赤いものが巻きついてきた。よく見るとその赤いものは服の袖のようで、そこから伸びる褐色の腕になんとも言えない既視感を覚えた。
「「あーッ!!」」
「え、エンマ大王様・・・」
「大王様だなんて堅苦しいのはなしだって言ったろ?それよりどうだ?妖怪大運動会、楽しんでるか?」
「うーん・・・まぁ楽しんでるかな・・・」
「そうか!あ、そう言えばケイ、大運動会終わったあと時間あるか?」
「え?一応なにもないけど・・・」
「ならエンマ殿に来いよ!前にお前が興味持ってた本仕入れたからよ」
「本当?」
「ちょおーっと待ったァー!!」
「「うわッ」」
べりッと剥がされたエンマ大王。どうやらイナホちゃんとUSAピョンに引っ張られたらしく、ずるずると引き摺られていた。そしてエンマ大王の腕があった私の首元には、今度はまた違う褐色の腕が巻きついて。
「気安く触んじゃねぇ!」
「おじいちゃん!?」
え、エンマ大王に啖呵切った人初めて見た・・・て、いやいやそうじゃなくて!
「エンマ大王様!ケイちゃんを誑かすのやめていただけませんかねぇー!私の数少ない妖怪仲間なんですから!それにこの後ケイちゃんは私とランデヴーする予定なんですからぁー!」
「え、そんなの聞いてな・・・」
「どうせたった今思いついた一方的な約束だろ!?だったらそんなの無効だ!」
「いーえッ!!無効ではありませんよ!」
「無効だ!」
あぁ、なんかデジャブを感じる・・・ついさっきも同じような光景をどこかで見た気がするのだけど、考え出したら頭が痛くなってきた。もう放っておこう。
「ここにいましたか、大王様」
ズキズキと痛み出した頭を抑えていると、不意に涼しい声が耳に入った。その声を聞いた瞬間、さっきまでイナホちゃんと口喧嘩していたエンマ大王はギクリ、と肩を揺らす。
「ぬ、ぬら・・・」
「私の目を盗み執務をサボるなど、大王としての自覚が足りませんぞ。しかも人間の小娘としょうもないことで喧嘩して・・・」
「「しょうもなくない!!」」
「ええい黙りなさい!!とにかく、大運動会の主催者といえど書類はあるのですから執務室に戻ってください!それに小娘、お前のチームはもう整列しているのが見えないのか!さっさと行け!」
「ヒィイイ・・・!」
「あ、ちょっ!引きずんなよぬら!!自分で歩けるっつーの!」
「逃げるでしょうが!!」
ずーるずーると両手にイナホちゃんとエンマ大王を引き摺りながら去っていくぬらりひょんの背中を呆然と見送る。ふと彼が振り返ってきたから、ありがとうの意味で会釈をすると、離れているにも関わらず私に聞こえるような音量で鼻で笑った。
・・・なんか、腹立つな。
「おじいちゃん、私たちも行こうよ。みんな待ってるよ」
「ん、そうだな」
首から腕をどけたおじいちゃんは、ぽんぽんと私の頭をなでるとからんからんと下駄を鳴らしながら歩く。
「・・・なんか、今日のおじいちゃん優しい気がする」
「気がするじゃなくてそうなんだよ」
「えー?」
「それに・・・」
「それに?」
「可愛い孫をどこぞの馬の骨かわかんねーやつに渡すかってんだ」
「・・・・・・・・・やっぱりおじいちゃん、今日変」
「かもな」
照れ隠しのつもりで前を歩くおじいちゃんの背中をどつくと、それさえもおじいちゃんのツボに入ったのかより一層笑い声を大きくした。
ーーーーー
愛梨様、この度はリクエストありがとうございました!そしてさっきも申し上げましたが大変長らくおまたせ致しました・・・!!2ページにわけましたが、最後ケイゾウおじいちゃんが全部持っていってしまった上にぬら様の登場が極端に少ないと言う・・・!
こんなのでよろしければどうぞお持ち帰りくださいまし・・・!
prev / next