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▼ ゆきむー様よりリクエスト


「フウ2…?」


学校帰り、帰路をてくてくと歩いていると不意にそんな言葉が聞こえた。フウ2だなんて聞き覚えのありすぎる単語に思わず反応しそうになるけれど、何とか踏みとどまった私は足を動かすことに集中する。今日は珍しくジバニャンもウィスパーもいないのだ。早く帰ろう。


「ね、ねえ待って!!」


ぐいッ。強硬手段に出たらしい声の主は私の腕を掴むと無理やり後ろに振り返させた。振り返って思わず遠い目をする。そこには案の定、私が想像していた人物がもともとの垂れ眼をさらに垂れさせて私を見つめていた。


「フウ2、だよね…?」


…けれど私は、彼には悪いけれどしらを通さなければいけない。


「あの…どちら様ですか…?私、フウ2って名前じゃないんですけれど…」


彼…有馬ユウトくんは一瞬、悲しそうに目を見開いたけれど、腕をつかむ手にわずかに力を入れるとまっすぐと私を見つめた。


「…違う、君はフウ2だよ。僕にはわかる。あの時みたいに妖怪の姿じゃないけれど、僕はどんな姿でもフウ2を見つけられる自信があるから。…ねぇ、フウ2、君の本当の名前、教えてよ」

「あ、まの…ケイ…」


思わず答えてしまった。これじゃ私がフウ2と言ってるようなものじゃん。なにやってんだろ私…!
苦悶する私をよそにユウトくんはなんだか嬉しそうだ。


「ケイちゃん…いい名前だね」

「ありがと…?」

「ねえフウ2…じゃなかった、ケイちゃん、なんであの時いなくなっちゃったの?」

「あの時?」

「ほら、僕が死神みたいなのに襲われた後だよ」

「…あぁ、あの時か」


確か、人間に干渉しすぎて強制送還されたんだっけ。まぁ、おかげで元の人間に戻ることはできたわけだけど、どうやらユウトくんは、少なうとも私がいなくなって寂しいと感じてくれたみたい。


「なんていうか、強制送還というか…」

「ふーん。あ、ねぇねぇ、この後時間ある?もしよかったらまた僕の家に遊びにおいでよ」

「あー、このあとはちょっと…」

「みーっけ!」


ぐいッ。またもや後ろに引っ張られた私の体は急なことにバランスを崩す。が、ぽすんと柔らかいものに受け止められたと思った瞬間には、首にぐるんと腕が巻き付いた。ああ、この袖開くりした黒いシャツめっちゃ見覚えあるんだけど…


「マック…」

「おっせーぞ。ケイがいつまでたっても帰ってこねーから、来ちまった」

「来ちまったって、あんたね…」


ポケット雲外鏡を手に入れてからというものの、ちと乱用しすぎじゃないかしら。最近よく桜町でマックを見かける頻度が多い気がするんだけど。


「こないだ言っただろ?今日はイナホも一緒にみんなで遊ぶって」

「いやそんなこと言っ」

「言ったよな?」

「…ハイ」

「っし、じゃあ行くぞ!」


肩を組んだまま踵を返したマックはずーるずーると私を連行する。いや、ほんと、マジでそんなこと言ってない気がするんだけどねえちょっと。視線で訴えるもマックはどこ吹く風。知らこすぎてついていけないんだけど。こうなったマックは止められない。引き摺られるまま諦めの境地に入っていると、またもや腕が後ろに引っ張られた。

あぁ、何だか嫌な予感…


「…あ?」


ちょ、マック!顔が殺人鬼だから!怖いから!


「ちょっと、彼女と話してたの僕なんだけど」

「知らねーよ。こいつは今から俺たちと用事があるんだよ」

「その割には嫌そうにしてるけど?」

「気のせいじゃね?」

「気のせいだと思うのならもっとケイちゃんのこと知った方がいいよ」

「…お前にこいつの何がわかるんだよ」


あああああ怖い、怖すぎるよ二人ともぉおおおお!!!なんか火花散ってんの見えるんだけど!!気のせいか背後にでっかい虎と龍が見えるんだけど!!!こんな二人の間に挟まれたくないんだけどおおおおおおおお!!!!ちょ、ジバニャンでもウィスパーでも誰でもいいからどうにかして…

バチバチと未だ火花を散らすマックとユウトくんに現実逃避していると、ちょんちょん、と肩をつつかれた。何、誰、今度は何なの…
露骨に顔に出したまま振り返った。


「何してるんだ、お前は」

「あ、オロチ」


双頭の龍を携えたオロチが、私の今の現状を呆れたように見ていた。あぁ、龍ちゃんたちにすさんだ心が癒されたよ。


「不毛な争いに巻き込まれてるんだよ」

「そうか」

「…助けてくれても、いいんだよ?」

「さて、どうしたものやら」

「鬼かッ!」


ため息を吐きながらちらっと二人を見ると、オロチが来たことにも気づいてないらしく未だに冷戦してる。もう帰っていいかな。


「そういえばケイ」

「はい…」

「雪女がお前を探していたぞ。なにか約束でもしていたんじゃないのか?」

「…あ!してた!雪女を映画に連れて行ってあげる約束してたの。ありがとうオロチ!今度は影オロチも一緒に遊びにおいでね。お刺身用意してるから!」

「楽しみにしている」

「じゃあね!」


たったかたー、とその場を走り去る。危ない危ない、危うく雪女との約束をすっぽかすところだったよ。

なんでも、最近上映し始めた恋愛映画を見て見たかったんだって。恋愛映画って私あまり興味はないけれど、雪女が見たいっていうからせっかくだし、って思って。実は、何気に楽しみしてたりするんだよね。





「「………」」

「………」

「…おい、オロチ」

「なんだ」

「お前、そういうところ本当に蛇だよな」

「褒め言葉として受け取っておこう」

「…え、誰かいるの?」

「ケイを唆したやつがいる」

「えッ!」

「人聞きの悪い…」





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ゆきむー様、この度はリクエストありがとうございました!そして、たいへん長らくお待たせして申し訳ございません…!!

マックくんとユウトくんの冷戦で、オロチ勝者ということでしたが、いかがでしたでしょうか?はじめシリアス化と思いきや実はギャグ路線だったっていうフェイント。マックくんは夢主ちゃんのことになったら人格が変わったらいいのにという管理人の妄想を織り交ぜた結果、中々にカオスになったと思っております。

そして実はのダークホースは雪女ちゃんだったとか。なんでもありません。

今後ともどうかしらたき。をよろしくお願いいたします…!!






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