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単なる憶測だけど




「ッ!?な、なに…?」


ドラゴンボールを抱えてブルマさんたちのいる洞窟に猛スピードで向かっている途中、とても強い気を感じた。この気、知ってる…!ベジータだ…!いるのは知っていたけど、こうやって遭遇するなんて本当ついてない…!


「と、とにかく隠れないと…!」


びゅんッと岩の隙間に体を滑り込ませ、息をひそめる。少しの間そうしていると、上空にベジータが現れ、キョロキョロと周りを見回した。お願い…、そのままどっか行ってくれぇ…!


「何者だ、出てこい!いるのはわかってるんだ!」


ひぃぃいい…!ば、バレてらっしゃる…ッ!あいつの言うとおり出て行っても見逃してくれる保証なんてどこにもないし…!例え飛び出して交戦したとして、今の私がベジータに勝てる確率なんてたかが知れてる。あ、案外このまま知らこくじっとしてたら、諦めてどこかに行ってくれるかもしれない…


「さっさと姿を見せんと、ここら一体を吹っ飛ばすぞ!」

「(なんでだよバカッ!!)」


なんであいつって殺すか吹っ飛ばすかの選択肢しかくれないわけ!?なに、自分が吹っ飛ばされたいの!?意味わかんない!!
…、し、仕方ない…ドラゴンボールはここに置いといて、私だけ出て行こう…気乗りしないけど!!


「ま、待ってよ!」


ど、どうか見つからないでくれぇぇ…!
震える体を叱咤して岩によじ登る。ひぃ…あ、案外近くにいらっしゃったのね…


「わ、私だよ。ベジータ」

「ほう?お前、カカロットの娘だな」

「…よく覚えてるね。怪我はもういいの?」

「まぁな。皮肉に聞こえるのがムカつくが…まぁいい」


ふよふよとゆっくり近づいてくるベジータに冷や汗がたらりと流れた。うわ、うわ…こ、これ以上近付くんじゃありません!ドラゴンボールが見えちゃうでしょッ!!
…そんなこと、口が裂けても言えないけど…


「薄々貴様なんじゃないかと思っていた。ほかの地球人どもがいたんだ、貴様がいても不思議じゃない」

「…そう」


ふと彼が小脇に抱えているものに目がいった。あ、あれはドラゴンボール!ま、まさかあれは、クリリンさんが持っていたものなんじゃ…!それじゃあ悟飯たちは…
最悪の情景が頭を過る。待って、決めるのはまだ早い。もしかすると彼が5つのドラゴンボールのうちの1つをかっぱらってきたものかもしれない。


「…ねぇ、そのドラゴンボールはどうしたの?」

「ん?これか?プレゼントされたんだ。貴様の仲間のツルツル頭にな」

「…ッ!!あ、あんたもしかして、クリリンさんを殺したの!?」

「そうしてほしいのなら、今すぐ引き返して殺してやってもいいぞ?」

「…ん?」


そうしてほしい…?ベジータの口ぶりからしてクリリンさんからは本当にもらっただけで、殺してはいないの…?


「感謝しろ。全てのドラゴンボールが集まったお祝いに生かしてやった」

「全ての?」


てことは、ベジータはあいつからドラゴンボールを全部ぶん捕ったってことなの?な、なんてやつ…よくやるよほんと。
ちらっと視線を背後のドラゴンボールにやった瞬間、すぐ目の前にベジータが降り立った。あ、危うく後ろにひっくり返るところだったんだけど…!


「いッ…」

「…おい、その手に持ってるものはなんだ」

「は?…あ」


やっべ、ドラゴンレーダー持ちっぱなしだった!な、何か言い訳を…そ、そうだ!


「こ、これ?ただのデジタル方位磁石だよ。ほら、私ってば方向音痴だからってブルマさんが持たせてくれたの!」

「ふん、そんなでかい方位磁石しか作れないような科学力で、よくこんな星まで来れたな」


余計なお世話だっつーの。


「ほっとけよぅ…」

「ところで、ここにはカカロットのやつも来ているのか?」

「お父さん?来てないけど…だ、だってあんたとかその他よくわかんない連中がいるなんて思ってなかったし…」


なんせあの人は全治1か月だし。どっかの誰かさんのせいで。
ごにょごにょとお茶を濁していると、そうか、と呟いたベジータは唐突に私の頭に手を伸ばした。に、握りつぶされるぅぅう…ッ!!


「……」

「うぐぅ…」


思わずギュッと目を瞑ると、予想に反して優しい手つきで頭をなでられた。な、なんなのかね…


「そうか…そいつは残念だったな」

「う…?」


目を開けると思いのほか穏やかな顔のベジータがいたんだけど。え、なにこれ、なんかの罠?
すっとベジータの手が頬に移動し、親指が私の目元をそっとなでた。ひぃい…!こ、怖いよぉおおおおッ!!!


「俺たちは、最後のサイヤ人だ」

「はぁ…そうですね…」


とりあえず今はこの手をどうにかしてほしいです。未だにふにふにと私の頬をなでるベジータを見上げる。本当なんだろう、今の状況…私そろそろ帰りたいんだけど…


「あの、ベジータ…?大丈夫…?」

「…あのガキの気持ちが少しわかった気がする」

「へ?」

「…なんでもない。俺の気が変わらないうちにさっさと行け」

「お、おう…」

「せいぜいフリーザたちに見つからないように帰ることだな」


そう言ってベジータは私の頬から手を離すと、あっという間にどこかへ飛んで行ってしまった。い、一体何だったんだろうか…謎が謎を呼んだ瞬間であった。


「…とにかく、なんとかドラゴンボールは見つからずにすんだみたい…にしても…」


ベジータが触れた頬にそっと触れた。最後のサイヤ人…そういえばベジータの故郷は巨大隕石の衝突で滅びたってラディッツがいってたよね。家族だってきっとそれで…
もしかして…


「寂しいのかな…?」





*****



「ただいま!」

「おねえちゃん!」


洞窟に着いてすぐ勢いよく悟飯が飛びついてきた。よしよし悟飯!会いたかったよー!いい子にしてた?


「シュエ!!よかった…無事か!?」

「クリリンさんたちも無事でよかった…!そういえば、私ちゃんと見つけてきましたよ!」

「ドラゴンボール!そう!それを待ってたんだ!」

「さすがシュエちゃん、えらい!」

「いやん照れる…!」


うふふ、と笑いながらドラゴンボールをクリリンさんに手渡すと、途端に険しい顔をする彼になんとなく事情を悟った。


「シュエ、事情は後で説明する。とにかく今はここを離れないといけないんだ」

「大体のことは見当がつきますよ。私もさっきベジータに会いましたから」

「ッ!」

「いッ…!?」

「お、おねえちゃん…!あいつに、あいつになんかされたりした!?」

「大丈夫だったよ。なんか普通に見逃してくれたけど」

「う、嘘…」


何やら全員が信じられん!って目で私を見てくるんだけど。大丈夫安心して。私も信じられないから。とりあえずベジータに頭なでられたってのは黙っておこう。


「ら、ラッキーだったなお前…」

「まぁ…」

「クリリン、悟飯くん、シュエちゃん!とにかく急ぎましょ!」

「あ、はい!」


こうして私たちはこの洞窟を後にしたのだった。


「ッ…」

「シュエちゃん?どうかした?」

「いや、別に…」


ただ…なんか嫌な悪寒がしただけなんだよね。ベジータかな。あは、あははは…あぁ、否定できないのが辛い…






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